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(2) オットセイ

1) VHF方位測定方式

わが国におけるオットセイのバイオテレメトリー実験は、水産庁遠洋水産研究所の馬場らが、1980年7〜8月の1ヶ月間にわたりロベン島のキタオットセイ群の26頭の雌に発信器を装着し行動追跡を行った例、および1988年7月と1989年7月に東部ベーリング海のプリビロフ諸島セントポール島において、2頭の育児雌に潜水深度発信器を装着し、数日間の潜水深度を連続して記録した例などがある。

遠洋水研で開発したテレメトリーシステムは陸上用と海上用とからなり、その内容は以下の通りである。

a) 陸上用テレメトリーシステム

陸上におけるシステムは、送信器、アンテナ、受信機、記録機、制御機で構成される。送信器は電波を出すだけの単純送信器とオットセイの動きを検出する活動用送信器の2種類とし、動きの検出は傾きの検出が容易な水銀スイッチを使用した。送信器はFM方式のパルス波を送信し、オットセイの姿勢変化に応じた水銀スイッチの開閉によりパルス間隔が変化する。オットセイが激しく動くと記録は櫛歯状となり、動かない時には直線の記録となる。

単純、活動送信器とも周波数は53MHz、外形寸法は直径35mm×長さ155mmの円筒形で空中重量(電源含む)220gである。材質はアルミニウムで、耐圧30気圧以上である。電源は単II型リチウム電池2個で約6ヶ月間使用できる。制御機は受信チャンネルと観測時間を任意に設定でき、複数個体の無人観測に利用される。アンテナは八木アンテナと2エレメント短縮アンテナを、受信機は方向探知とパルス復調機能を有する受信機(牧田電子株式会社 MBR-2型)を用いた。

b) 海上用テレメトリーシステム

海上のテレメトリーシステムは、送信器、アンテナ、受信機、記録機、復調機で構成される。海産哺乳類の海上追跡の場合は、呼吸のために浮上する短時間しか受信できないため、送信器の装着は呼吸時に必ず海面上に出現する頭頂部とし、電源部は背中とした。

送信部は、外形寸法が直径55mm×高さ26mm(センサー突起部19mm、30〜40cm)、空中重量100gの円筒形で半導体圧縮センサーを有し、測定水深範囲は200mまでである。周波数は53MHz、寿命は約1週間で、伝搬距離は数kmである。浮上の検知は、海水と大気の電気抵抗の違いを感応する方式のスイッチ(Saltwater switch)による。

浮上すると保持していた深度情報を送信し、2〜3秒後にその情報はクリアーされる。データの伝達方式はパルス間隔変調方式で、深度に応じてパルス間隔が変化する。電源部は直径36mm×長さ122mmの円筒で、単II型リチウム電池2個を有し、空中重量は、180gである。

発信部、電源部ともにハウジングの材質はポリカーボネイトで、両部合あわせた水中重量は44gである。

 

 

 

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