日本財団 図書館


4. 「観光まちづくり」とは何か

 

□観光まちづくりが注目される背景

近年、住民と行政の協働作業による「まちづくり」に対する関心が高まりをみせており、福祉のまちづくり、防災まちづくり、国際交流のまちづくりなど、様々な側面からの取り組みが、全国各地で行われています。行政サービスの質を高めるためには、まちづくりの主体である住民の参画が必要な場合が多く、住民の関心も高まっているのです。

そして、このようなまちづくりとしての取り組みの進むことが、大変、期待されているテーマが「観光」です。

 

なぜ、観光をテーマとするまちづくりが期待されているのでしょうか?

ひとつは、人々のふるさと意識を深め、生きがいを深めてもらえることです。まちには、ガイドとして、地域の良さやみずからの体験を語りたいと考えている人たちが大勢います。観光をテーマとしたまちづくりを通じて、こうした人々が生きがいを見出す場を増やしていくことができます。また、こうした人たちの肉声で地域のよさを伝えていただくことによって、これを聞く人々の地域への愛着もいっそう深まるのです。

二つめは、地域活性化の手段として観光への期待が大きいことです。わが国では、各地に山紫水明の美しい自然環境や古(いにしえ)の時を体感させる文化財等が存在しており、こうした地域のよさを資源として活かすことに、多くの人が関心を持っています。過疎化に悩む中山間地域や空洞化が進む中心市街地をはじめとして、多くの地域が来訪者(交流人口)を増やし、その力で活性化を実現すべく、資源の掘り起こしと活用を進めています。来訪者も、新しい発見を予感させる魅力的な観光地の登場が期待しています。

もうひとつ重要なのは、貴重な自然、歴史的な資源、快適な住環境等、地域のよさの持続的な利用を進めることです。この背景には、こうした地域の貴重な資源を失うことに対する危機感があります。今日、余暇時間の増大、豊かさ指向の高まり、交通体系の整備などを背景として、観光客の飛躍的な増大が見込まれています。世界的にも観光旅客の増大は大きな傾向の一つということができます。また、観光の内容も多様化しており、体験的な要素を加えツアーや、秘境ツアーといった特定のマーケットに向けた企画が多くなっています。こうした観光ニーズ、対象の多様化は、貴重な資源を傷め、定住環境を悪化させる可能性もあるだけに、増大する観光需要に対して、問題をまねかずに受け止めることのできる魅力と持続性を兼ね備えた観光地の形成が求められています。

これまでの観光開発はともすると、経済的な視点からの開発が先行し、それによって、地域が誇りとする貴重な資源が破壊されたり、ゴミや交通渋滞などの生活環境の悪化をまねいたりということがありました。その結果、来訪者、観光関係者と一般の住民の間にしばしば対立が生じる事態にもなっています。こうした対立をまねかずに、地域の貴重な資源の恵みをできるだけ多くの人が享受できるようにする必要があります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION