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また観光行動は、通勤・通学に比べて時間制約が緩いことも、代替手段に関する情報検索の必要性を減じていることも考えられる。

また交通手段の利用状況では、公共交通機関利用者の7割弱、自家用車利用者の8割強が、当日選択した交通手段を観光行動で恒常的に利用していると答えており、利用交通手段が固定化している傾向が示されている。公共交通機関利用者の中でも3割強の人が、場合によっては車利用へ転換する可能性を示していた。逆に自家用車利用者のうちの2割弱しか、公共交通機関への転換可能性を示さなかった。

須磨海浜水族園以外の地域・施設への周遊行動の可能性は、自家用車利用者よりも公共交通機関利用者の方が高くなっている。一般的に、自家用車が持っている機動性から考えると、逆の結果が示されており、広域的な観光促進のためには、公共交通機関との連繋および自家用車利用者への情報提供が重要であると考えられる。

次に「交通に関する意識」についての分析では、公共交通機関利用者、自家用車利用者共に、行き先を決めてから交通手段を決める傾向を示しており、その傾向は前者の方が強く示されている。自家用車利用者については、交通手段を決めてから行き先を決める場合があること、つまりドライブそのものが観光目的となることが示唆されている。

交通手段の優先利用については、公共交通機関利用者、自家用車利用者共に当日利用した交通手段を優先的に利用していることが示唆されている。

当日利用した交通手段には、公共交通機関利用者、自家用車利用者共に満足していることが示されているが、自家用車利用者の方がその傾向が強い。

渋滞及び駐車場の有無に関する意識では、公共交通機関利用者は、渋滞を気にする傾向を示している。駐車場に関しても若干気にしている。公共交通機関利用者の中でも「車がない人」は、目的地の駐車場の有無を気にしていない傾向を示している。当然、自家用車利用者は、渋滞、駐車場の有無共に気にする傾向を強く示している。

須磨海浜水族園までのアクセスに関する意識では、公共交通機関利用者、自家用車利用者共に、必ずしも不便であるとは認識していない。神戸市内から不便であるとも認識していないことが示唆されている。

 

3. むすびにかえて

本稿は、都市内にある観光関連施設入場者を対象として、観光行動における交通手段選択の基準・変更可能性、及び交通に関する意識の相違を、主として公共交通機関利用者と自家用車利用者との比較で分析してきた。さらに交通アクセスでは必ずしも有利ではないと考えられる同水族園に対して、実際に観客が交通アクセスをどのように認識しているのかを明らかにすることも目的の一つであった。

交通手段選択では、公共交通機関利用者と自家用車利用者との間の対称性が示されている。

 

 

 

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