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(IV) 渋滞、駐車場に関する意識

都市内の集客施設においても駐車場の確保は重要であるが、用地確保の面で困難も伴っている*27。自家用車利用者が、入園者の約6割を占めるとされる須磨海浜水族園にとって、集客戦略のためには、駐車場は重要な問題であると考えられる*28。したがって、公共交通機関利用者、自家用車利用者が交通手段を選択する際に、渋滞の有無、駐車場の有無・混雑などをどの程度気にしているのかを理解することは、集客戦略上も重要だろう。そのことについて尋ねたのが質問項目(11)(12)である*29

公共交通機関利用者の場合、「渋滞が気になる」が3.7ポイント、「駐車場の有無が気になる」が3.2ポイントとなっており、「渋滞」を気にする傾向が若干示されている。例えば、「交通手段選択の基準及び理由」の項で既述したように、姫路市内からの観客は、

「神戸市内の道路混雑と駐車場の混雑を避けるため電車で来た」(姫路市、20代カップル)

「姫路から西は車を利用し、東は渋滞が多いので電車を利用する」(姫路市、50代女性3人グループ)

と答えており、交通状況を判断して利用交通手段を組み合わせて選択している観客がいることも、我々は理解しておく必要がある。観光関連施設周辺における、より確かな交通情報を提供出来れば、これらの観客のように交通手段を変更させることも可能であろう。

逆に自家用車利用者の場合、「渋滞が気になる」が4.3ポイント、「駐車場の有無が気になる」が4.2ポイントとなっており、公共交通機関利用者よりも「渋滞」「駐車場」を気にする傾向が強く示されている。自家用車利用者の場合、「渋滞」「駐車場」を気にしていても、やはり「車」を利用しており、交通手段が固定化していることが示唆されている。

公共交通機関利用者内での交通に関する意識の相違を表した図表5-1で、質問項目(12)を見てみると、公共交通機関利用者の中でも、「車がないから公共交通機関を利用した」と答えている観客は2.4ポイント、「その他の理由」と答えている観客は3.3ポイントであり、両者の値の差は、10%の有意水準を満たしている。したがって、公共交通機関利用者の中でも、「車がないから」と答えている観客は、当然、観光目的地での「駐車場の有無」を気にしない傾向を示している。

 

(V) 須磨海浜水族園への交通アクセスに対する意識

一般的に須磨海浜水族園は、交通アクセスに関して必ずしも有利ではないが、実際に同水族館を訪れた観客は、どのように認識しているのであろうか。

 

*27 神戸市観光交流課によると、神戸の代表的観光地である北野異人館街を訪れる団体客用の大型観光バスは、北野町周辺地域で駐車場が確保出来ず、約2.5km離れたメリケンパークで待機している。

 

*28 須磨海浜水族園展示部長房安氏によると、同水族園では、大型観光バスが多い時期には、約2.0km北西にある須磨離宮公園との契約によって、観光バスのために駐車場を確保している。

 

*29 ここで公共交通機関利用者に対しても、観光行動において「渋滞が気になるか」「駐車場の有無が気になるか」を尋ねた理由は、渋滞する可能性がある場合、あるいは駐車場が混雑する可能性がある場合に、自家用車利用を諦め、公共交通機関を利用するのかどうかを探るためである。

 

 

 

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