これらを合計した131組が、観光行動で恒常的に車を利用していると答えている。例えば、大阪府の南部地域からの観客は、
「車以外ででかけることはない。この何年間か電車に乗ったことがないし、近くのコンビニヘも車で行くから。水族園の近くに駅があるのかも知らない」(門真市、20代、家族連れ;富田林市、20代、家族連れ)
と答えており、交通手段変更の可能性がほとんどないことを窺わせている。
自家用車利用者で、公共交通機関と使い分けている31組の場合、その判断基準としているのは、「距離・時間」が9組、「目的地」が9組、「渋滞の程度」が5組、「車の利用可能性」が3組、「天候」が3組、「駐車場の有無」が2組であった。自家用車利用者の中で、場合によっては公共交通機関を利用する可能性がある選択的利用者は、これら31組にすぎない。自家用車利用者は、観光行動で車を利用することが固定化していることを示しているといえるだろう。
以上の分析から、公共交通機関利用者の約7割が恒常的に公共交通機関を利用しており、3割強が場合によっては自家用車を使う可能性を示している。これに対し、自家用車利用者の8割以上が恒常的に車を利用し、公共交通機関を利用する可能性があるのは2割弱にすぎない。
(III) 周遊行動の可能性
須磨海浜水族園に来園した観客は、どのような周遊行動をとっているのであろうか。集客施設経営者にとっても、周辺施設との連繋による広域観光によって誘客効果を図るためには、観客の周遊行動を把握しておくことは、有意義であると考えられる。
公共交通機関利用者107組の内、同水族園への行き帰りに「周遊行動を行なった、もしくは行う」と回答したのは51組(48%)であった。これに対して、自家用車利用者では、174組の内61組(35%)であり、公共交通機関利用者よりも10ポイント以上周遊行動の実施あるいは実施可能性が低くなっている。機動性の面からは、自家用車利用者の方が公共交通機関利用者よりも周遊行動を行い易いと考えられるが、結果は逆になった。
公共交通機関利用者は、須磨海岸・須磨浦公園・須磨離宮の散策、神戸ハーバーランド・中華街(元町)・三宮での食事や買い物を行うと答えている。公共交通機関を利用する場合には、電車の経路や乗り継ぎなどを事前に情報検索する必要があることや、途中下車の容易さ、駐車場を探したり、駐車時間を気にする必要がないことなどが、周遊行動の可能性を高くしていると考えられる。質問票調査の際、自家用車利用者は、当日の思い付きで、目的の場所にだけ出かける場合が多いと回答しており、日帰りの観光行動では、公共交通機関利用者に比べて計画性に欠ける傾向があることも考えられる。