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自家用車利用者の内、「公共交通機関の方が余計に時間がかかる」と答えた26組について、公共交通機関を利用した場合の所要時間評価の正確性を分析してみると*24、14組が所要時間を過大評価しており、誤差率の平均値は+46%であった。この場合も、非常に大きな値となっている。所要時間を過小評価したのは6組であり、誤差率の平均値は−27%であった。代替交通手段の所要時間を、±10%以内でほぼ正確に評価したのは6組であった。

公共交通機関利用者、自家用車利用者共に、自らが利用していない交通手段の所要時間に関して、非常に不正確な知識しか持っていないことが窺われる*25。その理由として考えられるのは、観光行動が通勤・通学行動と異なり、日常の生活圏を離れて行なう行動であり、いわば馴染みのない移動、習慣性の無い移動という点である。その為、目的地までの地理的知識や公共交通機関の接続等の情報を十分に持ち合わせていない可能性があり、誤差率が大きくなったと考えられる。

以上の結果から、観光行動では、利用していない交通手段の所要時間は、公共交通機関利用者、自家用車利用者共にほとんど認識していないし、認識している場合でも、非常に不正確に判断していることが窺われる。その傾向は、通勤行動の場合より顕著である。したがって、代替交通手段に対する認識の低さを考慮すると、観光行動では、所要時間を判断して交通手段を選択している可能性は低いことが示唆されている。

 

(II) 交通手段選択の基準及び理由

観光行動で利用する交通手段を決める基準、理由はどのようなことが考えられるであろうか。何故当日の交通手段を選択したのか、あるいはどのような場合には交通手段を変更する可能性があるのかについて分析してみよう。

当日選択した交通手段を、観光行動でどの程度利用しているのかを表した図表4を見てみると、公共交通機関利用者107組の内、交通手段選択の基準・理由が「特にない・無回答」は18組であった。

 

図表4 当日選択した交通手段の利用状況

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*24 例えば、大阪市内からの自家用車利用者の場合には、実際に大阪市内の公共交通機関利用者が、同園に来るまでにかかった所要時間の平均値をもとにして評価時間との誤差率を計算した。該当する地域からの公共交通機関利用者がいない場合は、時刻表をもとにして「接続時間5分+平均運転間隔の半分」で所要時間を算出し、徒歩時間を加えて計算した。

 

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