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観光行動は、通勤・通学に比べて時間制約が緩いので、代替手段に関する情報検索の必要性が低いことも、理由の一つと考えられる*21

さらに代替交通手段に対しての認識を示した観客について、公共交通機関利用者で「自家用車での所要時間を答えた人」のうち、「自家用車を利用した方が時間がかかる」と答えたのは35組中6組、自家用車を利用した方が早い」と答えたのは20組、「所要時間が等しい」と答えたのは9組であった。所要時間に関して、「自家用車の方が遅い」と評価したのは約2割であり、約6割が自家用車の方が早いと評価している。

一方、自家用車利用者で「公共交通機関での所要時間を答えた人」のうち、「公共交通機関の方が時間がかかる」と答えたのは56組中26組、「公共交通機関の方が早い」と答えたのが18組、「所要時間が等しい」と答えたのは12組であった。所要時間に関して、半数近くが「公共交通機関の方が遅い」と評価し、公共交通機関の方が早いと評価したのは約3割にとどまっている。

これらの結果から、互いに7割の人が、代替交通手段での所要時間が分からないと答えていること。また代替手段での所要時間を認識していると考えられる人のうち、自家用車利用者では、「公共交通機関を利用した方が遅い」と答えた人がどちらかと言えば多かったのに対して、公共交通機関利用者では、「自家用車を利用した方が早い」と答えた人が明らかに多かった点は注目すべきである。

 

2] 認識している所要時間の正確性

Heggie(1975)は、通勤行動において、公共交通機関利用者、自家用車利用者共に、利用していない交通手段の所要時間・費用に関して不正確な知識、それも実際よりも時間・費用がかかると考える傾向があると指摘している*22。須磨海浜水族園の観客で、利用していない交通手段の方が時間がかかると答えている人々は、正確に時間を評価できているのであろうか。そのことについて分析してみよう。図表3は、当日利用しなかった交通手段を利用した場合の所要時間に対する評価の正確性を表わしたものである。

公共交通機関利用者の内、「自家用車を利用した方が所要時間がかかる」と答えた6組について、自家用車を利用した場合の所要時間評価の正確性を分析してみると*23、4組が所要時間を過大評価しており、誤差率の平均値は+63%と非常に大きな値になっている。

 

図表3 代替交通手段での所要時間評価の正確性

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(注) ( )は、誤差率の平均値。公共交通機関利用者、自家用車利用者共に代替交通手段の方が時間がかかると回答した人に対して、所要時間評価の正確性を分析している。

 

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*22 Heggie(1975), pp.15-16

 

 

*23 誤差率の計算式は以下の通りである。誤差率(%)=[(予想所要時間÷実所要時間)−1.0]×100

例えば、大阪市内からの公共交通機関利用者の場合には、実際に大阪市内の自家用車利用者が、同園に来るまでに掛かった所要時間の平均時間を基準にして、評価時間の誤差率を計算した。該当する地域からの自家用車利用者がいない場合は周辺地域からの自家用車利用者の所要時間を参考にして計算した。

 

 

 

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