なぜなら、旅行業法は行政法規であり、行政法規は原則として属地主義により、その地域内にあるすべての人を一律に規律するが、その効力が及ぶ範囲は日本の領土主権の及ぶ範囲内のみであるためである*4-2。
次に、現地法人がオプショナルツアーを主催する場合を検討する。
外国には旅行業法の規制が及ばないので、海外で現地法人自身が、オプショナルツアーの申込みを受け、契約を締結させたのであれば、当該現地法人は旅行業の登録は必要としない。また、日本からの主催旅行業者が海外で現地法人を代理して旅行者と契約を締結しても同様に当該行為は旅行業務とはならない。
現地法人は日本の旅行業法でいう旅行業者でなく、その主催するオプショナルツアーも主催旅行ではない。当該現地法人を日本で代理して旅行者と契約する者は、他の旅行業者の主催旅行を代理して契約する者や旅行業を営む者の代理にならないので、当該現地法人が運送又は宿泊機関として自ら旅行サービスを提供していない限り、旅行業及び旅行業者代理業の登録を必要としない。なお、これに対しては、外国旅行業者のための代理業務の法律効果は本人である外国の旅行業者に帰属することになるから、そのような代理業務を取り扱う者を通じて、結局、外国の旅行業者が本邦において係る代理業務を行わせることは無登録営業になる*4-3との反論もある。
旅行業法では、外国に本拠を持つ旅行業者等の登録は想定されていないことも合わせ、現地法人がオプショナルツアーを主催する場合は、日本の旅行業者又は日本にある者が、申し込みを受け手配する契約を成立させたとしてもその行為は、旅行業務とならず旅行業法の規制の対象にならないと考えるのが相当である。そのため、オプショナルツアーに係る取引において生じた債権に関し、債権者は営業保証金や弁済業務保証金から弁済を受けること(旅行業法第17条、第22条の9)はできず、旅行者からオプショナルツアーの申し込みを受け手配する契約を締結する者には、旅行業務の取扱いの料金の掲示(旅行業法第12条)や取引条件の説明(旅行業法第12条の4)も求められないことになる。
したがって、オプショナルツアーにおいては、日本の旅行業者が関与する場合でも、旅行者の保護のための措置が期待できないということになる。ただ、日本からの主催旅行業者が、オプショナルツアーを主催する場合で、旅行者との取引が外国で行われるときは、積極的属人主義に基づき在外自国民の国外行為を関係国内法令の適用対象とすることが、国際法上も許される*4-4と考えれば、これについては、旅行業法の規制の対象とすることの可能性はある。
*4-2 三浦雅生著『新・旅行業法解説』1996年トラベルジャーナル 69頁、田中二郎著『新版行政法上巻』1974年弘文堂 66頁
*4-3 三浦『新・旅行業法解説』 69頁
*4-4 山本草二著『国際法』新版1994年有斐閣 245頁