パンフレットの記述からは否定されるが、現地法人の実施するオプショナルツアーにおいても日本からの主催旅行業者を主催旅行業者と考えることもできる。手配旅行契約であれば現地法人の定めたオプショナルツアーの代金と旅行業者が掲示した旅行業務取扱料金とをそれぞれ示す必要があるが、パンフレット記載のオプショナルツアーには、その区分がなされていない。
また、現地法人が実施する場合でも、現地法人の定めたオプショナルツアーの代金をそのまま旅行者に示すのではなく、現地法人が定めた代金に日本からの主催旅行業者がなにがしかの差益をのせてオプショナルツアーの代金として旅行者に示している場合は、ユニット*3-13で仕入れたものを自社の主催旅行とする例と類似し、このような代金の設定は、主催旅行のように包括的に定められており、これは主催旅行約款第2条第1項で規定する「あらかじめ…支払うべき旅行代金の額を定めた旅行」と考えられるためである。
現地法人が、主催(実施)者である場合、旅行者と申し込みを受け付けた日本からの主催旅行業者の立場は以上のようにいく通りかが想定できる。日本からの主催旅行業者を主催者と考えるなら主催旅行約款に基づき契約が締結されることになり、手配旅行契約を締結したと考えるなら手配旅行約款に基づく。主催・手配いずれの旅行契約にも当たらないとすると、日本からの主催旅行業者が公示している約款に基づかずに契約することとなる。パンフレットは、現地法人主催(実施)のオプショナルツアーは、明らかに日本からの主催旅行業者の主催旅行でないと表しているが、オプショナルツアーについて当該旅行業者と旅行者との間で手配旅行契約が成立することを明確に否定している表現はない*3-14。
第3節 オプショナルツアーにおける責任の所在
標準旅行業約款では、主催旅行契約の部、手配旅行契約の部のいずれにおいても旅行業者は、自ら旅行サービスの提供を引き受けるものではない*3-15ため運送・宿泊機関の事故など旅行サービスの提供そのものに伴う責任は負わない。しかし、主催旅行契約が成立すれば、旅行業者に手配債務、旅程管理債務、安全確保債務、特別補償責任、旅程保証責任が生まれる*3-16。
*3-13 主催旅行や複合型手配旅行で、旅行業者が旅行素材を手配するに当たって、自ら企画・手配することなく、旅行商品としてほぼ完成したものを他の旅行業者やツアーオペレーターから仕入れ、それに自らの利益をのせて旅行者と旅行契約を締結する商品。
*3-14 パンフレットには、「当社(日本からの主催旅行業者)の旅行条件」は適用されない旨の記載があるため、素直に読めば手配旅行約款も適用されないことになる。なお、LOOK JTBのパンフレットでは、パンフレット記載外のオプショナルツアーの日本申込みは旅行者と取扱店(受託旅行業者)の手配旅行契約になるとし、オプショナルツアーではないがリクルートISIZEのホームページ(http://www.isize.com/travel/to_index.html)の現地発着ツアーの広告では海外発着のパッケージ旅行を日本の旅行業者に申し込む場合は手配旅行になる旨の表示をしている。
*3-15 三浦『新・標準旅行業約款解説』 41頁では、「当社は、自ら旅行サービスを提供することを引き受けるものではありません」という旧約款という文言が削られたが、前段で「手配することを引き受けます」となっている以上は、改めて同様の趣旨を念押す必要もない、という趣旨の記述がなされている。
*3-16 三浦『新・標準旅行業約款解説』 45〜47頁、このほかに、佐々木正人著『改正旅行業法・約款の解説』1996年中央書院71頁では、「保護義務」をあげている。