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標準旅行業約款手配旅行契約の部(以下「手配旅行約款」という)第2条第1項では、手配旅行契約とは「旅行者のために代理、媒介又は取次をすることなどにより…手配をすること」としている。したがって、旅行者のために代理、媒介又は取次をすることは手段の例示であり*3-9、これ以外の手配方法でも手配旅行契約の成立は否定されない。もっとも、旅行者が契約する相手方は運送・宿泊等のサービスを提供する旅行サービス提供機関であって、自ら旅行サービスの提供を行わない者は想定していないとも考えられるが*3-10、手配旅行約款第2条第1項の手配旅行契約の定義は「旅行サービスの提供を受けることができるように、手配する」となっているため自ら旅行サービスの提供を行わない者に対して、手配を行っても問題はないとも解せられる。

3] 現地法人は旅行サービス提供機関でありその代理人と捉える

現地法人が自ら旅行サービスの提供を行う旅行サービス提供機関である場合で、日本からの主催旅行業者が契約締結代理権が与えられている場合は、当該主催旅行業者は現地法人の代理人となり、現地法人が旅行者に旅行サービスを提供する契約を成立させることができる。これは、日本国内において旅行業者が定期観光バスを手配する場合、定期観光バス会社から代理権を与えられていれば、定期観光バス会社を代理して、運送契約を成立させることができることと同様に考えてよい。この場合は、自ら旅行サービスの提供を行う者を相手方として旅行者が契約するため、旅行業者と旅行者との間で手配旅行契約が成り立つ。この行為は、旅行業法の旅行業務の定義においても、旅行業務と考えられている*3-11。ここでの問題は、現地法人が実施する日本における定期観光バスのような外見を持ったものが、現地法人自ら提供を行っているのか、日本の旅行業者の如く手配を行っているのかが不明瞭な点である。

なお、旅行業者はその求められた旅行サービスを機械的に手配するもので旅行業者に裁量の余地のないものである場合に、その旅行業者が求められている旅行サービスについての契約締結代理権を有している場合には、航空運送契約又は宿泊契約が成立するのみで、手配旅行契約までは成立しない*3-12という見解もある。

4] 日本からの主催旅行業者がオプショナルツアーにおいても主催旅行業者で現地法人は手配代行者と促える。

 

*3-9 三浦『新・標準旅行業約款解説』 212頁

 

*3-10 手配の概念を旅行業法第2条第1項第1号〜第5号の行為と通常考えられているものにリンクさせた考え方。

 

*3-11 旅行業法施行要領(第223)

 

*3-12 三浦『新・標準旅行業約款解説』 223頁 東京高等裁判所平成元年〔ネ〕第2670号損害賠償請求控訴事件平成2年3月28日付け判決についての記述

 

 

 

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