3. 現地法人がオプショナルツアーの主催者の場合
表1で検証したパンフレットに記載されたオプショナルツアーの主催者は、現地法人である。日本からの主催旅行業者がオプショナルツアーの主催者ではないことは明確にされ、さらに「当社(日本からの主催旅行業者)の旅行条件」は適用されない旨の記載がある。したがって、日本の旅行業者は、当該オプショナルツアーの旅行契約については、自社の主催旅行約款は適用しない旨を主張しているものと解せられる。
この場合、現地法人がオプショナルツアーの主催者であるので、そのオプショナルツアー自体の旅行契約は、当該現地法人の約款や旅行条件に基づくこととなる。当該オプショナルツアーに対し日本からの主催旅行業者が申し込みに携わらず、旅行者が直接現地法人に申し込む場合は、パンフレットのオプショナルツアーに関する記載は、単なる情報提供もしくは現地法人の広告と考えられる。したがって、パンフレットの記載内容や情報提供に対しての責任はともかく、オプショナルツアーの旅行契約そのものには、日本からの主催旅行業者は関与しない、と考えることができる。
だが、日本からの主催旅行業者が旅行者から申し込みを受け付けた場合は、日本からの主催旅行業者はどのような立場になる可能性があるのかを検討してみる必要がある*3-7。
1] 現地法人の代理人と捉える
日本からの主催旅行業者又はその主催旅行の添乗員、現地係員が旅行者からの申し込みを受け付けて、オプショナルツアーの旅行契約を締結させることができるならば、日本からの主催旅行業者は現地法人から契約締結代理権が与えられ、その代理人と考えられるだろう。この場合、日本からの主催旅行業者は、現地法人の受託旅行業者のような立場になる*3-8。したがって、旅行者と日本からの主催旅行業者との間で主催旅行契約は締結されていないことは明らかだが、手配旅行契約が成立するかが問題となる。
2] 旅行者の代理人と捉える
日本からの主催旅行業者に現地法人から契約締結代理権が与えられていない場合は、オプショナルツアーの旅行契約において、日本からの主催旅行業者は旅行者の代理人として現地法人と契約を締結することとなる。この場合もこの行為に手配旅行契約が成立するかが問題となる。
1] 2] の場合及び旅行者のために現地法人に対して媒介や取次をする場合などにおいて、手配旅行契約が旅行者と日本からの主催旅行業者との間で成立するかが問題となる。
*3-7 日本旅行業協会法制委員会作成『主催旅行の募集広告・パンフレット類作成ガイドライン』1996年日本旅行業協会65〜67頁では、「オプショナルツアーの運行事業者が主催旅行業者の主催者と異なる場合」に「主催旅行業者が申込みに携わらず、旅行者が現地で申込む場合の例」として、表示例を示しているが、主催旅行業者が申込みに携わる場合の表示例は示されていない。
*3-8 受託旅行業者とは、旅行業法第14条の2で規定されている他の旅行業者が実施する主催旅行について、当該他の旅行業者を代理して主催旅行契約を締結することを内容とする契約を締結した旅行業者をいう。ここでは、現地法人は国外に所在するゆえ旅行業法上の旅行業者でない。したがって、日本からの主催旅行業者は、旅行業法でいう受託旅行業者にはならないが、両者の関係は主催旅行を実施する旅行業者と受託旅行業者のような関係になっている。