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それを国別にあらわした。実記は、全5編構成になっているが、分析を深めるために現在の国境線での国別に集計しなおした。その結果は、資料2の表のとおりである。

全314枚のうち、「建築物」は53%(実数166枚)、「内装」は4%(14枚)、「交通」は11%(35枚)、「まちなみ」は23%(71枚)、「自然の景観」は7%(22枚)、「民俗」は1%(2枚)、「工具」は1%弱(1枚)、「歴史物」は1%強(3枚)であった。

 

2-1. 国別の分類と特徴

本節では、国別の分類の特徴と、都市別の特徴をのべる。

 

2-1-1. アメリカ(第1編)図版59枚、地図10枚

アメリカの特徴は、交通に関する図版が25%(15枚)をしめることである。うちわけは、港湾が4と鉄道11である。特に鉄道に関するものが多いのは、1870年に開通した大陸間横断鉄道の影響であろう。使節団一行は、この鉄道でサンフランシスコからニューヨークまで移動している。その後も東海岸での都市間移動も鉄道である。アメリカ国内でも完成の宣伝として、いろいろな銅版がでまわっていたと推測される。当時の日本では、一行の出発の直後に、新橋−横浜間の鉄道が開通している。平地での鉄道の紹介だけでなく、山間部を走る鉄道技術をしめしている。

そして、さまざまな国のなかで、アメリカだけ、地図が記載されている。地図は大陸間横断鉄道の沿線のものであり、内陸部のものである。ヨーロッパの国々にくらべ、アメリカの内陸部は日本国内での認知度が低かったことがうかがえる。

都市別では、サンフランシスコは「ゴールデンブリッヂ」(建築物−交通)と港湾(交通−港湾)の図がとりあげられている。内陸部(ソルトレイクシティ〜東部)では、鉄道での移動中のため、鉄道関係(交通−鉄道)が、もっとも多くの図版をしめ、公共施設(建築−公共施設)、モルモン教の寺院(建築物−寺院)、インディアン(民俗)、ロッキー山脈の景観(自然の景観−山)の図がとりあげられている。ワシントンでは、公共機関(建築物−公共機関)、1861年の南北戦争関係の旧跡や墓地(建築物−旧跡・−墓地)が多くをしめる。東部めぐりの部では、「ナイアガラの滝」(自然の景観−滝)がいろいろな角度からの図版がとりあげられ、その数も多い。ボストンではまちなみ(まちなみ−都市)、ニューヨークも「ブロードウェイ」のまちなみ(まちなみ−都市)「百貨店」(建築物−商店)の図版が掲載されている。

 

2-1-2. イギリス(第2編)図版66枚

イギリスの図版では、「建築物」が6割をしめる。一番目の図版は「ロンドン橋」(建築−交通に分類)であった。そのほかには「バッキンガム宮殿」や「ケンジントン宮殿」(建築−王宮)、王宮の内装(内装−王宮)など、王室にかかわるものが多い。当時の日本は天皇中心の国家建築をめざしており、イギリスの王権の強力さと立憲君主制に学ぶべきところがあったのであろう。

 

 

 

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