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第1編 (全20巻)は「アメリカ」で、地図10枚・図版59枚所収。

第2編 (全20巻)は「イギリス」で、図版66枚所収。

第3編 (全20巻)は「ヨーロッパ(上)」で、フランス(8巻)、ドイツ(プロシア6巻)、ベルギー(3巻)、オランダ(3巻)で、図版65枚所収。

第4編 (全21巻)は「ヨーロッパ(中)」で、ロシア(5巻)、デンマーク(1巻)、スウェーデン(2巻)、ドイツ(ゲルマン4巻)、イタリア(6巻)、オーストリア(3巻)で、図版86枚所収。

第5編 (全19巻)は「ヨーロッパ(下)」で、ウィーン万国博覧会(2巻)、スイス(3巻)、フランス(リヨン・マルセイユ1巻)、スペイン・ポルトガル(未渡航1巻)、ヨーロッパ総論(5巻)、帰航日程(アフリカ・アジア寄港7巻で、図版38枚所収。

巻のうちわけをみると、アメリカ(20巻)、イギリス(20巻)、ドイツ(10巻)、フランス(9巻)の比重が大変多いことがわかる。『実記』は、1878年(明治11年)12月末に初版が発売された。使節団の帰国から5年後のことである。初版は、全5冊同時発売で4円50銭であり、約500部が用意された。翌年の1879年(明治12年)2月24日付(発売は3月28日)で再版1000部がでまわったが、翌1880年(明治13年)には品切れの状態となり、同年9月18日付で3刷本が1000部だされている。そして、1882年(明治15年)12月には、一般読者のために予約販売がおこなわれ、3円50銭(上製本5円)で、販売戦略として日本初の頒布販売が導入された。予約金1円で月賦50銭(上製本30銭増)、1883年(明治16年)4月より8月まで毎月1冊が配本された。このとき約1000部が流通され、合計約3500部が流通した。

 

1-3. 『実記』をあつかう理由

『実記』を読んだ読者は、どのように欧米諸国をかんじたのだろうか。その意味をさぐるすべは、120年余経った現在では数限られている。その一手段は、『実記』が提示した図版や記述を客観的に分析することである。この分析により、明治政府の意図や、久米をはじめ使節団一行が実際に目にした欧米を、「欧米の風景の生産」物として「いかに紹介されたか」を問うことが可能となる。本稿では前述のように視覚効果としての図版の効用に着目し、次章にて図版の分析をおこなう。

 

2. 図版の分類

 

『実記』には、図版314枚と地図10枚が掲載されている。図版はすべて欧米各国の絵はがきや銅板絵など、現地で流通していたものである。図版には人物や動物は、記載されていない。分析にあたり、図版は、「建築物」「内装」「交通(汽車・船・港湾施設、馬車、街路のみ、駅舎や倉庫は建築物に含む)」「まちなみ」「自然」「民俗」「工具」「歴史物(小物のみ、遺跡は建築物に含む)」に大分し、その後内容を細分した。

 

 

 

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