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同所は、EGの支援により、北海道が価格とアクセス面で競争力が向上したため、九州に替わる重点誘客対象地域に決定し、マーケティング戦略の策定を行った。

その当時、台湾の外国旅行のピークシーズンである旧正月休みの時期は、「さっぽろ雪まつり」へのツアーが冬の訪日旅行の主流となっていた。そのため、北海道といえば雪や「さっぽろ雪まつり」という冬のイメージが定着していた。同所は、新たな北海道のデスティネーション・マーケティングには、冬から他の季節、札幌を中心とした道央の訪問地から他地域への平準化をすることが肝要と考えた。また、富良野・美瑛に代表されるヨーロッパ的な丘陵景観や大雪山系・阿寒湖等の山水の大自然、そしてカニ・鮭等の海産物のグルメが主要な観光魅力となると考え、「冬以外の北海道」をテーマに誘客対象地域を道東に絞り込むこととした。

北海道のイメージとしては、「ヨーロッパ風リゾート」というイメージを打ち出すこととした。台湾の人々は、ヨーロッパに対して憧れの念を抱いており、また、このイメージにより、北海道をアジアの近隣諸国や日本国内と差別化できると考えた。1995年6月、台湾の有力日刊紙『聯合報』の旅行特集版で北海道が取り上げられ、同所の働きかけにより、「日本の小さな北欧」というキャッチフレーズが冒頭に掲載された。これが、同所の北海道のマーケティングの始動であった。同所は、1年後の1996年6月、北海道に関する報道発表を行い、「ヨーロッパ風リゾート」のイメージ浸透に努めた。

 

(3) 日本観光協会台湾事務所と道観連との共同マーケティングの開始

1995年8月、道東方面のツアー商品の開発を促進するため、JNTOと道観連との共催、EGの航空券提供による協力で、台湾の旅行会社5社を招請し視察事業を実施した。視察対象は、日本観光協会台湾事務所が選定し、道東を中心に組み入れた。台湾の旅行会社は、集客に成功する保証がなくリスクが伴う新規ツアー商品の開発・販売に対し、非常に消極的であり、他社の新商品が成功するとこれを模倣する傾向が強かった。このため、同所は、従来より新商品の開発に実績のあるEG系列を中心とした旅行社5社を招請することとした。そのうち2社は、他の旅行会社に先駆けて道央を中心としたパッケージツアーの販売を既に開始していたが、さらに新たなルートの開発に強い関心を示した。

視察事業実施の翌月の9月、これらの旅行会社は、視察した観光魅力を組み入れ、紅葉をテーマとした道央・道東方面の新たなツアー商品の販売を開始した。同年9月から12月までの期間、これら5社は、計132本、3,732名のツアー送客の実績を上げた。

 

(4) 旅行会社によるプロモーションの開始

1995年9月から北海道ツアーの販売を開始した前述の旅行会社は、旅行代理店への販売促進を図るため旅行業界誌にツアー商品の広告を掲載したり、また、消費者の需要喚起を図るため日刊紙等にも商品広告を掲載した。

 

 

 

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