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本来二席は2編の予定であったが、もう1編落とすには忍びない高水準の論文があったので、あえて二席の三として選抜した。岡野論文である。岡野氏は昨年も二席に入選した論客であるが、本年も同じく須磨海浜水族園を対象としつつも、テーマをそこへ至る交通手段選択の問題に絞り、アンケート調査をもとに社会通念とはやや異なる興味深いいくつかの結論を導いている。論証は着実で説得力がある。

ここまでの4編の論文はテーマもアプローチもまったく異なっており、観光に関する学術研究論文の文字通り広がりを実感することができる。

奨励賞には釜山観光が地域社会に及ぼす影響分析を手堅くおこなった李論文と大阪の浜寺公園の再生を提案した平岡・佐藤論文が選ばれた。前者は経済的な分析をおこなった論文であり、後者は新しい観光の理念からひとつの公園再生計画に至る都市計画的な論文である。ここにも観光学に通じる多様なアプローチの可能性を見ることができる。

このほか残念ながら受賞には至らなかったが、バイリンガル教育とインバウンド観光との関係を論じた論文や観光産業へのICカードの導入を提案した論文など独自の視点に基づく魅力的な主張が多く見られた。今後学術論文としてさらに磨きをかけ、観光学の一翼を担う成果が生み出されることを期待したい。

 

観光学術論文審査委員名簿

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