日本財団 図書館


それを読者が読んで行こうと思ったら、実際には足を運ばない人が多いだろうとは思いますけれども、念のため、私と同じ動きをやろうとすれば出来るようにしておかないといけないわけなんです。これが言葉の不自由な方、つまり日本語が出来ない方でも行けるようにしなければいけないし、今まで旅行はあまり経験がない方でも簡単に、問題なく行けるように工夫して考えておかないといけないものなんです。

異なった文化を楽しむために一番効果的というか、おもしろいものといいますと、それはやはり体験です。私は、この徳島で一つびっくりしたことがあります。前もって阿波踊りの資料はいただいていましたけれども、今朝早く、実際に阿波踊り会館を伺って、中に入ってみますと、すばらしいというか、本当に感動的な画面が周りにありました。でも、本当にびっくりしましたのは、実際にガイドの方の指導によって動いてみると、あまりにも身体が思いどおりに動かないことなのです。実際に音楽に合わせてみて、どんなに体力が必要であるか、それはまず体験してみないとわからないわけなんです。おもしろくても他人がやるものであれば、あまり自分には身近に感じられないのです。ですから、体験というのは大変効果的なもので、特に言葉のわからない人にはよいのです。

今の私の日本料理教室もそうです。実は私は8月から腱鞘炎で、皆さんは働きすぎだと言うのですが、ジャーナリストはよくなるものなんです。それでも包丁は何とか持っていますけれども、参加するような料理教室というのは、9月から一時止めています。うまくいけば、また1月頃から再開できるのですけれども、今のあいだは、試食会をたくさん開くようにしてます。

その試食会というのが、一度に十五、六人集まり、テーマを決めて行ないます。私の仕事は伝統的なものを紹介する仕事ですから、例えば味噌でしたら、20種類、皆さんに地図を見せながら地方とのつながりを説明して、それから味噌汁以外に応用の仕方がたくさんあるとか、味噌そのものはどういう風につくられているのかとかを語ります。

それと、何か背景にあるストーリー、そこと文化の深い関わりのある話になるので、皆さんはそれが一番おもしろいと、それから実際に自分の食生活を一つ広げたと喜ばれます。ですから試食というのは、味見だけではなく、背景にあるストーリーも含めての話になるので、身体全体、頭も含めて使うような体験になるわけです。

それから、資料のことについてです。外国人にとっては、日本語の名前がすごく覚えにくいのです。皆さんがよく丁寧な英文の資料をつくっておられるのですけれども、その際、お願いしたいことがあります。それは和文も入れてほしいということです。なぜかというと、人との会話の中で話題にでる時には、やはり決まった英語はないので、「こんにゃく」は「こんにゃく」となります。隣の土佐になりますと、例えば「かつお」というのは、英語では「ボニート」というのですけれども、私の教室に来る人に話したり、アメリカで講演する際に、「ボニートとは何ものであるのか」といっても、絵も描かないし、それが魚であることもわからない、ぴんとこない言葉なんです。ですから、どうせでしたら最初から「かつお」とか「こんにゃく」を覚えてもらうので、隣に和文も載せてほしいのです。

私にしてみれば、やはり覚えるには、子供と同じように何か一緒に見ないと、なかなか覚えられないのです。ですから一番親切であるのが、元の和文があることです。それに皆さん、大抵日本語の勉強が始まるのはひらがなですね。かえってカタカナのほうが苦手なんです。「ツ」と「シ」の区別がまずつかないですし、「ン」と「ソ」というのがすごく難しいのです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION