インディペンデント・トラベルであろうが、グループツアーであろうが、その中には子供連れや高齢者、それから身体の不自由な人がいます。また特別な目的、ニーズを抱えている人もいるし、それから興味、趣味によってそれぞれ分かれてくるわけです。
例えばスポーツとか、美術工芸とか、そういうものに特別に関心を持っている人たち、これはスペシャル・インタレスト・トラベラーといいます。これがアメリカの場合ですと、どんどんどんどん広がっています。さっき申し上げたように、個人主義の社会の中ですから、みんなそれぞれ、自分なりのインディペンデント・トラベルの計画をすることになるのです。中でも、最近「食」の分野に人気があるようで、食を通して社会や文化を理解し、楽しむため、世界を旅行する人たちが増えています。
東京にある私の「文化の味」料理教室も、最初は在日外国の方を対象と考えていたのですけれども、この二、三年、随分海外からの申し込みが増えています。ほとんどの方が私の記事を読んで、興味を持って、それから申し込んだとのことなんです。ですからますますジャーナリストとしましては、その責任を重く感じるようになりました。
インディペンデント・トラベラーの場合は、記事が自分たちのプランを立てるうえでの良い情報になるようですので、最新情報でないとかえって逆効果になるわけです。競争の激しいツアーグループビジネスにとっても、記事が企画の段階でよいヒントになることもあるのではないかと思います。
ジャーナリストの力をちょっとお借りするという提案について一つ触れますと、私のジャーナリストとしての日本国内での仕事の99%は、日本の話題を英文で出すものなんですけれども、たまには違う仕事もあるわけです。青い目はしていないのですけれども、よく「青い目で見る日本」とかいう話題で、和文で時々出すこともあります。
「食生活ジャーナリストの会」という記者クラブがあり、その皆様と一緒に色々取材の依頼を受けますが、日本の取材の仕方と、アメリカの取材の仕方があまりにも違いますので、その違いについてもちょっと皆さんに説明しようと思っています。
アメリカでは、ジャーナリストが記事を書くにあたっては、まず“proposal”(プロポーザル)つまり、提案書から始まります。実績のあるジャーナリストでも、初めての相手ならば提案書を出します。今まで私もおかげさまで幾つか賞をもらっていますが、それでもプロポーザルの段階から始まります。新聞、雑誌の編集部にアピールするためには、提案書の内容に数多くのチョイスがあることが必要です。編集部ではそれぞれの事情があり、例えば、他の記事との兼ね合い、レイアウト等によって選ぶものが違ってきますので、本当につまらないと思うチョイスでも、全く同じような話題なんですけれども、あらゆる観点から説明しておきます。そうしないと編集部の気がすまないのです。
例えば「徳島」を話題にするならば、同じ「徳島」でもいろいろな観点、いろいろな話題を出さなければいけないということなんです。「海の幸」を中心に考えれば、鳴門の渦潮のワカメ、中林海岸の魚介類があります。「伝統体験」でしたら海部の大敷網、三好山城町の豆腐、こんにゃく、そばづくりの挑戦。徳島市内の工芸村にも和紙、藍染め等、いろいろな徳島があります。