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ですから、海外の新聞、雑誌のための取材をする時には、いつもその読者の気持ち、つまりあちらにいる方々の気持ちを頭に入れておかないと、うまくものが書けないのです。

皆さんご存じのように、日本人はどちらかというと集団を優先するというか、グループで動きますが、アメリカ人の場合は「個人主義」で、「個人」に重きを置きます。「個人主義」といっても大変広い概念なので、これを3つに分類します。「個人の自由」、「平等」、「自立」です。

その中で一番私が皆さんに注目していただきたいのは、「個人の自由」です。これが日常生活の中にも重要な概念として本当に生きているし、アメリカ人の典型的な行動の中にもよく現れていることなんです。

今日は飽くまでも観光ということで、この3点を観光旅行者に当てはめてみますと、まず「個人の自由」というのは“choice”(チョイス)、つまり選択の多さです。日本人の観光客ならば、一方的にこちらから用意をし、あまりチョイスがなくてもいいですが、外国の方、特にアメリカの方をお迎えする時には、つまらないチョイスでも結構なんですけれども、何かチョイスを与えないと、皆さんは喜ばないわけです。

最近「スターバックス」というコーヒーショップが、まだ四国には上陸していないと思いますけれども、東京あたりに何軒かあります。アメリカの場合は結構あちこちにありまして、空港内にも「スターバックスコーナー」というのが設けてあります。そちらに行きますと、コーヒーが何と10種類、さらに入れるミルクも、スキムミルクなのか、ハーフ&ハーフなのか、クリームなのかと、何しろ嫌になるほどチョイスを聞かれるわけなんです。ですから「コーヒーをください」と言ったら、まず「3種類の本日のコーヒーから何にいたしますか」と聞かれます。それからコーヒーの焙煎具合によってまた違ってきます。もちろんサイズ、それからお砂糖の種類も嫌になるほどたくさんあります。一杯のコーヒーを飲みたいだけなのに、あんなに質問をされるとびっくりします。でも一つの意味では選択の多さなのです。

次に「平等」というのは、これが非常に難しいのですけれども、例えば良い扱いであっても、他の人と異なった扱い、つまり特別扱いは、居心地の悪い場合が結構あるわけです。特に、外人だからどうのこうのというのは、非常に微妙な線なんですけれども、それはほとんど態度で読み取るわけです。非常に難しいでしょうけれども、平等社会から来る方々ですので、それも頭に入れていただければと思います。

それから、「自立」というのが、自分で計画、行動をしてみたい気持ちです。これが多分企画段階では一番頭の痛いことではないかと思うのです。というのは、企画というのは前もって用意することなのに、自立というのは反対です。「勝手にどうぞ」ということなんです。自分の気持ちでその場その場で決めると、「あっ、それもおもしろい。じゃあそれにしよう」とすぐに変更しますよね。ですからその変更を、特にパッケージツアーの中にどういうふうにはめ込んだらいいのかというのは、難しいチャレンジだと思うのですけれども、観光旅行者にしてみれば、自立してちゃんと自分なりのものというのが、一つの大事なポイントなんです。

観光旅行者は大きく二つのカテゴリーに分けられます。それは、インディペンデント・トラベラー、つまり自分なりの計画を立てて、自分なりの旅行をする人たちと、ツアーグループ、旅行会社の企画による旅をする人たちです。向こうでもツアーグループというのが結構あるわけですが、グループとして動きながらも、グループの仲間の一人でもあり、自分個人のことでもあるわけです。

 

 

 

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