その方々は非常にお元気です。石川・金沢は伝統工芸とか城下町ということで、もうすでに広く認識をされており、観光地イメージの再構築に非常に取り組みやすいということ、中京・京阪神・首都圏の大都市圏からの移動が比較的楽であることなどが理由です。ただし、この層の方々は数多くの旅行を経験された方々が多いですから、海外の観光地に引けをとらないホスピタリティーが求められますし、逆に海外にない国内ならではの魅力というのも必要になってくるだろうと思います。
海外からの誘客に関しましては、長期的に見て中国を中心とするアジア諸国が狙いではないでしょうか。「統計から見た石川県の観光」というのを拝見しましたら、もうすでに兼六園の外国人観光客のほぼ3分の2がアジアの方々ですが、中国などのようにようやく海外旅行の規制が緩和されはじめた国々は、まさに成長著しいマーケットであります。
JTBのデータを分析しますと、石川県全体の延べ宿泊人数というのは、1年前の93%、64万1,100人、その中で金沢市というのは1年前の88%、13万5,900人、県全体の約21.2%を占めています。全国の中での石川県の占めるシェアというのは2.7%、37分1、さらに金沢エリアの占めるシェアというのは0.57%ということになります。関東、中京、京阪神など需要の大発生地に比較的近くて広く人気を備えている割には少ないと思いませんか。
この石川県と金沢へ、どこから来られたお客様が多いのかというのを比較しますと、石川県全体の宿泊客では、近畿からのお客様が39%で突出しています。一方で、金沢市の場合ですと、首都圏からが37%で一番多いのです。金沢市への近畿からのお客様は16%という数字になっています。この数字からわかることは、石川県全体では近畿圏からのお客様が目立って多い割に、金沢だけでは近畿圏からのお客様が大幅に少ないのです。この理由について確かなことはわかりませんが、兼六園とか金沢城址などの歴史的、文化的な資源、さらに食文化や伝統工芸などの観光資源が近畿圏にある資源と重なっているというイメージがあるのかな、ですからほかの県域ほどに金沢に観光魅力を感じないのかなと推測されます。それよりは例えば奥能登、和倉とか、輪島とか、白山山麓とか、そういう自然のところに、近畿圏の方は魅力を感じて、金沢が通過観光地になってしまっているということが言えるのかもしれません。
石川県全体で考えたときに、近畿圏からのお客様を集客するためには、もっと金沢を京阪神大都市圏に対して観光PRし、受入体制なども抜本的に再構築をする、あるいは、県内他地域との周遊観光ルートを生み出し金沢をその結節拠点にして宿泊させるなどといった取り組みが求められるのではないでしょうか。
観光資源というのは、なかったらつくってしまうという方法もあるのです。東京ディズニーランドのようなテーマパークがその典型的な例ですが、何も大規模な施設に限定して、考える必要はありませんし、ハコものにこだわる必要もありません。朝市などちょっとした催し物でも大きな観光資源になります。
観光資源とその製造技術、そして利用技術、この三つを広い意味で観光資源ということができると思います。つまり観光資源の商品です。しかし商品をただ並べておくだけでは、そうそう売れるものではありません。ホスピタリティ、情報発信、地域と産業との連携、そして、これらを含めたマーケティングがあってはじめて観光資源が潜在的に持つ集客力が存分に発揮されるのではないでしょうか。