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そしてすぐその一つ一つをそろえる事にしました。小さい子供の履物やお年寄りの履物、それらを全部そろえ終わるかという時、診察を終えてでてきたおばさんに、「あら、ありがとう。えらいわね。」と言われました。僕はその時、心から嬉しいと感じました。それと同時に胸の中にかかっていた雲がすっきり晴れたような、なぜかとてもすがすがしい気持ちになったのです。

履物をそろえるという事は、とても小さいことかもしれません。でも、この小さい事が自分と相手の心をつなぐかけ橋となる事を僕は身をもって体験しました。そして、これは僕が自身を持って続けていくべき事だと思いました。剣道の稽古はこれからますます厳しくなっていくと思います。でも僕は、この先もずっと続けていきたいと思います。履物をそろえるという小さな礼儀は必ず相手の心に伝わると信じながら。

 

『剣道をとおして得たもの』

 

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沖縄県南風原町

志道館

中学二年生

照屋あいね

私が剣道をとおして得たもの。厳しい稽古に耐える忍耐力、勝負に勝った時の喜びに負けた時の悔しさ、生きていくうえで大切な礼儀作法、そして仲間です。

これまで八年間剣道を続けてきたおかげで、私にはとてもたくさんの仲間ができました。同じ道場の先輩や後輩だけじゃなく、違う道場の人、それに県外の人達とも仲良くなりました。

私には、そのたくさんの仲間の中でもとても大切な人達がいます。同じ志道館で、中学二年生の女の子四人です。私も含めてこの五人は、良き友であり、良きライバルです。皆同じ時期から剣道を始め、どんな時もずっと一緒に過ごしてきました。

はじめのころ、

「剣道なんて大嫌いだ。絶対にやめてやる。」

と何度も何度もそう思った私が、今もこうして剣道を続けているのは、この四人の友に出会えたからだと思います。

稽古が厳しく悔し涙を流したとき、試合で負けて大泣きしたとき、どんなときだって

「大丈夫、大丈夫だって。」

と明るく励ましてくれました。先輩や後輩、先生にもわからない気持ちもちゃんとうけとめてくれます。

お互いが共に励まし合い、なぐさめ合ってきて私達には切っても切れない絆が生まれました。

小さな事でけんかをし、仲間割れをして何日ものあいだ口をきかなかった事もありました。そんな事があるたびにどっちが悪いのかと考え合って答えもだせるようにまでなりました。

一緒に泣いて、一緒に悩んで、一緒に考えて、一緒に笑い合って五人で過ごしている時は私にとって、とても大切な時間です。

五人とも中学校が皆ばらばらで、稽古や試合や合宿のときくらいしか会えないけれど、その時間はいつも笑いが絶えず、とても楽しいです。

 

 

 

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