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『一期一会』

 

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北海道室蘭市

室蘭琢心館

中学二年生

歌川愛

はじめての東京、武道館に入ったとたんにその大きさに圧倒され、頭がまっ白になる思いでした。

先生から北海道少年剣道練成大会を前に、三回戦を突破したら、全国大会に出場させるという目標を与えられました。選抜されたチームの五人は、全員が武道館を目指し気持ち一つになり、厳しいけい古にはげみました。

そして、見事に三回戦を勝ち抜き四回戦に選出し、武道館出場のキップを手にしたのです。しかし、それからのけい古は前にも増して厳しいものでした。休むひまもない打ち込み、かかりげい古、週三回のけい古は地獄のようでした。私はその苦しみに、武道館にいける喜び、楽しみはうすれ、けい古に出たくない休みたいという気持ちが強くなり、けい古をさぼるようになりました。みんな私を見て母や周りの人達にはげまされるとともに、こんなところで気を抜くのは、あんなに頑張っているチームのみんなに迷惑をかけてしまうとあらためてけい古にはげみました。

試合当日、会場は全国から集まった剣士達が所せましと練習しており、最初のうちは気おくれがして体がスムーズに動きませんでした。しかし、厳しいけい古にたえ抜いた満足感、そしてチームの皆んなの闘志あふれる表情を見て、私も『やるぞ』という気が盛り上がってきました。一回戦『九州』、二回戦『岡山』と難敵を破りいつの間にか五回戦まで勝ち進み、見事ブロック三位と思っても見なかった成績をあげることができました。私はあの厳しいけい古にたえ抜いたからこそこの喜びをものにすることができたのだと思います。

私はある時、チェコの女性剣士の記事を読みました。そこには日本の武道にひかれて来日し、日本武道を通じて、思いやりの心や、礼儀の大切さなどをチェコの子供達に教えたいと剣道を学びに来たのだそうです。

その記事の中で私が特に印象深かったのは日本人の生き方、その底のある精神は『一期一会』だといってることです。

即ち一期一会とは、今に集中し明日はないという生き方、私の館にも『今の瞬間を一生懸命過ごします』という誓いがあります。けい古の度に唱和しているその誓いの意味が、武道館出場を目標に厳しく激しいけい古にはげんだあの一瞬一瞬に集中したけい古こそが、チェコの女性剣士が言う一期一会であるということを知ったのです。

私はなぜこのように立派な言葉が、外国の人が口にして、日本人の私達が知らないでいたのでしょうか。私達一人一人がその言葉の意味を理解し、努力することが大切だと思います。

また、一生懸命努力すること、礼節、やるべきことをきちんとやりとげる精神、このことが、戦後の日本の復興の言動力となったサムライの心だとこの人は言っています。

私はこの記事を読んで、外国の人が自分の国の生活に取り入れようとしている、素晴らしい風習、習慣があることを教えられました。私達日本人は、日本古来のよい所に気づかず外国の人から逆に教えられるということは恥ずかしいことだと思います。

もっともっと日本のよい所を思いかえし、日本をよりよい国にするよう私達は努力すべきではないでしょうか。

 

 

 

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