Teater Tour
シアター・ツアー
コミュニケーション・プログラムの中で、本年度新たに実施したのが、学生向けの企画「シアター・ツアー」である。本プログラムは、1]社会人になる前に一度は劇場に足を運ぶ機会をつくること2]専門教育の場と実際の現場を効果的にリンクさせることの2つを目的とし、舞台芸術を何らかの形で学んでいる学生を対象に、ゲネプロ(初日前の総稽古)の見学、本公演への招待を行った。事務局から各製作者へ企画趣旨を説明した上、賛同を得られた公演のうち、学生たちのスケジュールとも調整がつき、実現した公演が以下の表である。
最近では、現場で活躍するアーティスト、評論家などが大学で教鞭を執ることも珍しくなく、今回はこのような現場の事情も理解して下さる先生方を通じて大学にアプローチをした。特に、本年度のフェスティバルの広報印刷物にイラストをご提供いただいた武蔵野美術大学造形学部教授、小竹信節氏には、「ライブ」である舞台芸術の教育には、学内でのシュミレーションだけでなく、学外で現実に起きている公演に触れることが不可欠であるという立場から、積極的にご協力をいただいた。武蔵野美術大学の場合は、学生たちの中でリーダーを決めて事務局との間で日程調整、集合場所の確認を行うなど、学生たちがプログラムに主体的に参加してくれた。このことからも学生たちが、舞台を観ることをとても楽しみにしていることが伝わってきた。また、学習院女子大学の尼ヶ崎彬教授、日本大学芸術学部の松澤慶信先生にも企画趣旨をご理解いただき協力を得ることができた。
今回の最大の収穫は、延べ150名近くの学生の参加を得て、公演を観たいと思っている学生は私たちが想像する以上に多いということがわかったことである。ゲネプロという性格上、スケジュールがぎりぎりまで決まらないこともあったが、学生たちに対する告知が直前になってもかなりの数が集まった。この辺りの学生のフットワークの軽さが、社会人よりも「足を運ばせる」プログラムの対象として適していると言えるだろう。
それと同時に、一部実現が難しかった理由も今後の課題として参考になった。若いアーティストで、もともと同世代の学生の観客を見込んでいる場合(観客層が重なる場合)や、学生券を発行するなど独自に学生の観客掘り起こしの試みを行っている場合には、一部の学生を優遇するようなプログラムは不公平感を持たれたようだった。
今回は、本格的にプログラムを実施するためのいわば試運転のような形でのスタートだったが、問題の在処が分かったことが次回へ向けての大きな成果となったと考えている。