コミュニケーション・プログラム
本フェスティバルでは、97年に引き続き、コミュニケーション・プログラムとして、目的、対象を絞り様々なレクチャーやトークを実施した。フェスティバルの役割は、公演を開催するのみにとどまらず、観客、アーティスト、国内外の舞台関係者の相互コミュニケーションを密にする時間と場を提供することも大きな役目ではないかと考え、このプログラムを公演部門に並ぶもうひとつの柱として位置づけている。99年は、観客を対象とした「ミート・ジ・アーティスト」、アーティストを対象とした「アーティスト・ミーツ・アーティスト」、舞台芸術を学ぶ学生を対象とした「シアター・トーク」、「シアター・ツアー」、海外の舞台芸術関係者を対象とした「インターナショナル・ヴィジターズ・ウィーク」といった多岐にわたるプログラムを開催した。
Meet the Artist
ミート・ジ・アーティスト
作品のテーマや創作のプロセスに関して、公演終了後に演出家、振付家、出演者が語る観客向けトーク・プログラム。アーティストの素顔に触れ、直接話を聞くことで、舞台作品をさらに深く知ることのできる機会となることを目指し実施された当プログラムには、各公演とも予想を上回る観客の参加があり盛況を博した。質疑応答時にも観客からの積極的な発言が目立ち、作品を鑑賞するのみにとどまらず、アーティストと作品を巡って対話ができる機会を多くの観客が求めていることを実感させられた。このような観客を対象とした企画は、昨今、舞台に対する理解や興味を深め、観客層を拡大する有効な手段として注目されているが、フェスティバルとしても今回の成果を踏まえ、今後、積極的に取り組んでいきたい。
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野田秀樹作・演出・出演「赤鬼」
9/21(火)、23(木・祝)7:30の公演終了後/シアタートラム
演劇集団 円「遠い日々の人」
10/16(水)3:00の公演終了後/シアタートラム
イリーナ・ブルック演出「ダンシング・アット・ルーナッサ」
10/6(土)2:OOの公演終了後/パークタワーホール
MODE10周年記念作品「夢の女」
10/17(日)1:00の公演終了後/シアタートラム
[ダンス]
伊藤キム+輝く未来「on the map」
10/1(金)7:30の公演終了後/パークタワーホール
カンパニー・エア・ソーラ「ヴォワラ、ヴォワラ」
10/3(日)2:00の公演終了後/Bunamuraシアターコクーン
サシャ・ヴァルツ&ゲスツ「アレー・デァ・コスモナウテン[“宇宙飛行士”通り]」
10/29(金)7:00の公演終了後/かめありリリオホール
[リージョナルシアター・シリーズ]
弘前劇場[青森]「家には高い木があった'99」
10/23(土)2:00の公演終了後/東京芸術劇場小ホール2
桃園会[伊丹]「うちやまつり」
10/24(日)2:00の公演終了後/東京芸術劇場小ホール1
199Q太陽族[大阪]「永遠の雨よりわずかに速く」
10/30(土)3:00の公演終了後/東京芸術劇場小ホール2
飛ぶ劇場[北九州]「IRON」(アイアン)
10/31(日)3:00の公演終了後/東京芸術劇場小ホール1
Artist Meets Artist
アーティスト・ミーツ・アーティスト
国際的に活躍するアーティストの発想や方法論を多角的に知る機会を提供する、若手の演出家、振付家を対象としたレクチャー・プログラム。「テクニックを学ぶ」という発想から離れ、舞台芸術の多様性、ひいてはクリエイションとは何か?アーティストとは何か?といった根元的な問題を見つめることで、若手のアーティストの創造への刺激となることを目指して開催された。ワークショップなどのハウトゥ的な企画とは違う視点でのこのような企画は、多分に実験的なものであったが、アーティストのオリジナリティや思想の強度は、参加者にとって示唆に富むものであったのではないだろうか。
「身体/美術/音楽/舞踊」
9/22(水)、23(木・祝)、24(金)1:00〜5:00/世田谷文化生活情報センター
ワークショップB(22・23日)、セミナールーム(24日)
講師:天児牛大[山海塾主宰、舞踏家・演出家](3日間とも)
ゲスト講師:布施英利[美術評論家・作曲家](22日)
小沼純一[音楽文化論](23日)、渡辺保[演劇評論家](24日)
国際的な活躍を続ける山海塾主宰の天児牛大氏が、芸術界の論客を迎えて行った3日間連続のトーク・セッション。「踊りそのものというより、その周辺にあるもの」、「舞踊を成立させる、というより成立させたくなるもの」として様々な要素が提示された。布施氏とは生命の歴史やあり方をも含んだ身体論、小沼氏とはダンス音楽の歴史や振付と音楽の関係性、渡辺氏とは日本舞踊の特徴や変遷など、多くの観点から刺激的なディスカッションが展開された。