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いわば同学習会は、流出油災害対応に関係する官公民のネットワーク作りの場であるとも言える。

こうしたことから、同学習会を通じ「情報発信システム」構築に向けた官公民相互のコンセンサス作りを行うことが重要であると思われる。

以上、マスコミ報道と災害ボランティア活動円滑化情報問題の解決策として、二つの手法を述べた。これらの手法は並行して行ってこそ効果を発揮するものと思われる。

(6) 規模流出油災害における災害ボランティア活動の不稼動問題

既に述べてきたとおり、ナホトカ号事故の際には、その模様が連日にわたりマスコミ報道等によって全国に伝えられ、大規模な災害ボランティア活動も展開された。このように国民の注目を浴びた大規模な流出油災害もさることながら、小規模な流出油災害が全国各地で多数発生していることも紛れもない事実である。

小規模流出油災害は、マスコミ報道においても特段大きく扱われず、情報として一般市民等に達することもなく、その結果災害ボランティア活動が実施されずに終わるケースが多いものと思われる。

無論、小規模流出油災害においても、油防除専門機関による対応のほか、漁業者等を始めとする地元住民による自己防衛策としての対応が行われている。ところで、特に漁業者については、近年その高齢化がますます進み、油防除活動を行う上での安全・健康上の問題が危惧されるところである。そして、漁業者等がボランティアによる支援を望んだ場合にあっても、それを広く世間に訴える手段がないのが実情ではなかろうか。

この問題も、今後の災害ボランティア活動のあり方を考えていく上で、重要な検討課題の一つであるものと思われる。

その解決策としては、例え小規模流出油災害であっても、災害ボランティア活動への参加を希望するボランティアに対し、的確な情報を提供するシステムを構築することであり、前節で述べた「情報発信システム」がその役割を担うこととなろう。

●5章参考資料・文献一覧

1) 海洋工学研究所『重油汚染・明日のために/「ナホトカ」は日本を変えられるか』(平成10年12月)

2) 油災害ボランティアセンター『日本海からの熱い風/ナホトカ号重油災害ボランティアセンターからのメッセージ』(平成10年8月)

3) 海上災害防止センター、海上防災事業者協会『海上防災ハンドブック』 (平成8年9月)

 

 

 

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