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3] 専門職ボランティアの事前登録制度

次の手法として考えられるのが、油回収活動に関する「専門職ボランティア」の事前登録制度の導入である。

前述のとおり、ナホトカ号事故の際には「全国内航タンカー海運組合」の派遣したボランティアが、「三国ボランティア本部」のもとで油回収活動に参加、当該活動における指導的役割を担ったことが確認されている。

したがって、石油・海運業界等に所属する技術者、海上保安庁等の退職者等を対象に、このような「専門職ボランティア」となり得るボランティアを募集し、地方公共団体等、ボランティアの協力を要請する可能性のある側が、事前に彼らの登録を受けておくというのがこの手法である。

これら事前登録された「専門職ボランティア」は、油回収活動現場において「一般ボランティア」のリーダー格となり、当該活動の中心的役割を担うものである。

4] 油防除専門家による活動支援

最後に、油回収活動に係る「専門職ボランティア」の存在そのものを否定した上で、「一般ボランティア」のみが油防除専門家のアドバイスのもと、状況に応じ適切に活動すれば良いという考え方を踏襲する手法が考えられる。

すなわち、石油類の取り扱いや油回収等に関する専門の知識、技術、経験等を災害ボランティア活動に参加する者に求めることは一切せず、被災地に集まった「一般ボランティア」に対し、油種や現場の状況を見極めた専門家の適切な判断により、彼らに適したそれなりの活動現場や活動方法を与えるという手法である。

無論、状況次第によっては油回収活動そのものへの参加を自粛させ、彼らを側面・後方支援等にまわすこともあり得る。

ところで、この手法で一番の問題となるのが、誰がその見極めを行うかであり、かつ、自主性を持ったボランティアがそのような要請を受け入れるか否かという点である。

地方公共団体等がボランティアに対し協力要請を行った場合にあっては、当該協力要請側がボランティアコーディネートの一環として、ボランティアの適切配備、作業の安全を目的としたアドバイス等の業務を行うこととなるであろう。

一方、こうした協力要請の枠外のボランティアに対してはどうであろうか。仮に1]で述べた「情報発信システム」が構築され、油回収活動そのものへの参加自粛を呼びかけていた場合にあっても、協力要請枠外の「一般ボランティア」が自らの意思・判断により、大挙して被災地に現れるケースも十分にあり得るものと思われる。

 

 

 

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