その場合、果たして現場で既に活動を行っている油防除専門家が、ボランティアの適切配備等に関するコーディネートまで行えるものであろうか。また、「一般ボランティア」に対し、現場でその理由を十分理解してもらえるものであろうか。
やはり、この場合にあっても、「専門職ボランティア」の事前登録制度などを通じ、平素からボランティアに対し、油回収活動そのものについての専門性について強調しておく必要があるのではなかろうか。
なお、本手法が効を制した代表的事例を一つ、以下に紹介する。
平成2年1月25日、京都府経ケ岬付近を航行中のリベリア船籍の貨物船「マリタイム・ガーデニア号」、2,027総トンは、季節風に圧流され暗岩に接触し浸水、航行不能となった。その後、陸岸に座礁し船体が二つに分断、積載していた燃料のC重油916klが海上に流出、付近一帯の沿岸域を汚染した。
この事故は、我が国で初めて災害ボランティア活動が行われた事例であったと思われる。すなわち、某宗教団体に所属する団体ボランティア延べ480名が7日間にわたり現地に滞在し、災害ボランティア活動は行われた。ボランティアの半数は油回収活動に従事、また残りの半数は炊き出し等の後方・側面支援に従事するなど、極めて組織立った活動が展開されたという。
その際、同ボランティア団体の代表者が、現地で既に防除活動に従事していた海防センターのもとを毎朝訪れ、作業場所及び回収方法、並びに作業上の注意事項等に関する的確なアドバイスを専門家から受けた上で、当該災害ボランティア活動は行われたという。
正に海防センターは、ボランティアの善意を十分に尊重した上で、流出油種や現場全体の状況を見極めた専門家の適切な判断に基づき、彼らに適したそれなりの活動現場や活動方法を与えたのであった。
以上、油回収活動に関する専門職ボランティアの不在問題について、その解決策として四つの考察を行った。しかしながら、これらの考察内容を各々単独で実施したとしても、必ずしも直接の解決策とはならないであろう。
すなわち、いくつかの方策を組み合わせて実行することの相乗効果により、有効な解決策となり得るものと思われる。