日本財団 図書館


具体的には、韓国財閥系企業グループの一つである三星グループからボランティア約200名が5日間にわたり、また、同じくLGグループから約700名が10日間にわたり投入され、海岸漂着油の除去作業等に従事したという。

(3) 韓国における災害ボランティア活動と住民一斉動員制度

前項で述べたとおり、シープリンス号事故における韓国の災害ボランティア活動は、企業グループ単位の活動であった。このように一部の企業が実施母体となった災害ボランティア活動は、我が国の場合もナホトカ号事故において見られた活動形態である。

しかしながら韓国では、こうした企業単位の災害ボランティア活動のみならず、一般市民等の有志により当該活動が実施されるケースもある。いずれにせよ、海洋警察庁海洋汚染管理局防除課のレポートによれば、韓国における災害ボランティア活動は、地方自治体の長の責任・管理のもと実施されることとなっており、その活動内容は海岸漂着油の除去作業のほか、資機材等の運搬、防除専門家の後方・側面支援等、多岐にわたる。

韓国は現在、OPRC条約の早期批准に向け、油汚染事故に関する国家緊急時計画を策定中であり、同計画には災害ボランティア活動に関する記述が含まれる予定である。

ところで韓国では、現在も、儒教的な文化及び社会規範が色濃く残っており、また大家族的な絆も強いことなどが、災害ボランティア活動受入れの下地となっている。さらに韓国では、従来、国家的規模による災害等の有事を想定した上で、民防衛法の定めるところに基づき、住民動員による対応措置を目的とした民防衛計画が定められている。これはまさに、現在、韓国が直面している南北問題の存在を遠因としている制度であることにほかならないであろう。

海洋警察庁海洋汚染管理局防除課からのレポートは、韓国における一般市民等による油防除活動への参加は、災害の収拾を国民の共同努力のもとに行うという民防衛計画の主旨に則ったものであり、国策上も推奨すべき活動であると伝えている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION