2.2 韓国の場合
海洋警察庁海洋汚染管理局防除課からのレポートによれば、韓国においても、我が国のナホトカ号の事例と同様、流出油災害時における一般市民等による無償の油回収活動、すなわち災害ボランティア活動が行われているという。最近のその代表的な事例がシープリンス号事故のケースである。
なお同国の場合、流出油災害に限らず、住民等の災害発生時における一斉動員制度が国策として確立されており、災害ボランティア活動はその延長線上にある、まさに国情を反映した社会制度の一つであると言えよう。
(1) シープリンス号事故の顛末
1995年(平成7年)7月23日午後2時頃、オーマン原油約8万トンを積載したキプロス船籍のタンカー、シープリンス号(約145,000総トン)は、接近中の台風3号を避けるため麗水港外にて避泊中、圧流され全羅南道麗川郡所里島に座礁した。その後、機関室に火災・爆発が発生するとともに貨物タンクが破損、貨物油及び燃料油約600kl(推定)が流出した。
当該海域は、韓国沿岸でもっとも養殖漁業の盛んな海域の一つであったことなどから、水産資源への深刻なダメージが危惧された。韓国政府は、ただちに海洋警察庁及び民間防除会社に対し油防除活動の実施を指示する一方、漁業者をはじめとする地元住民、一般市民等のボランティアによる油防除活動も併せて行われた。
我が国からも、船舶所有者の依頼を受けたサルベージ会社が、同船の船固め、船底調査及び残存油の抜き取り作業のため出動したほか、国際タンカー船主汚染防止連合会(The International Tanker Owners Pollution Federation Limited/ITOPF)の要請により、石油連盟が油回収装置、充気式オイルフェンス等、所要の資機材の貸し出しといった迅速な対応を行っている。
流出油は韓国沿岸域に漂着し、付近の養殖筏等に壊滅的な被害をもたらした。また、一時は風及び海潮流の状況次第によって、流出油の一部が我が国沿岸域にも漂着するおそれが懸念された。事実、流出油の一部は対馬海峡を通過し、隠岐諸島付近に達したが、結局、我が国における被害は報告されなかった。
(2) シープリンス号事故における災害ボランティア活動
韓国全羅南道麗川郡所里島の沖合いで発生した、シープリンス号事故の際には、専門家による活動と併せて一般市民等のボランティアによる油防除活動も行われた。