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2.3 中国の場合

 

海事局船舶監督所からのレポートによれば、中国においてもナホトカ号の事故と同様、流出油災害時における一般市民等による無償の油回収活動、すなわち災害ボランティア活動が行われているという。

ただし、政府としては安全・健康上の理由などから、災害ボランティア活動に対する積極的な奨励は行っていないという。

(1) 中国における近年の船舶による流出油災害

国家環境保全局の資料によれば、1975年8月から1995年8月までの20年間において、中国国内及びその沿岸海域で発生した船舶による流出油事故に関し、流出量100トン以上のものが26件、そのうち流出量1,000トン以上のものが4件発生している。

そのうち最大級の事故は、1976年2月16日、広東省汕頭港沖の東北海上で発生した、ソマリア船籍のタンカーの衝突に伴う流出油事故で、推定約8,000トンの原油が流出している。

さらに、これら一連の流出油事故の中で、被害影響度の観点から特筆すべきは、1983年11月25日、青島港内で発生したパナマ船籍のタンカー、フェオソ・アンバサダー号(M/T Feoso Ambassador、中国語訳「東方大使号」以下F号と呼ぶ。)の座礁に伴う原油流出事故であった。

F号は青島港黄島油区の積み出しバースにて原油43,943トンを積載後、港内泊地にて燃料油及び清水補給のため錨泊を行った。補給終了後に抜錨、水先人立会いのもと出港を開始したが、水先人下船の6分後、付近の浅瀬に船底を接触、積荷である原油のうち約3,344トンを海上に流出させた。

この事故により、青島港内を含む膠州湾全域及びその付近の海岸線、述べ約230kmが漂着油による汚染被害を受けた。当該エリアは中国随一の国内避暑地を兼ねた観光名所であるとともに、昆布やハマグリをはじめとする貝類の大規模な養殖漁業等が行われていたことなどから、その被害額は当時としては破格の1,775万元に達した。また、防除活動に約6ヶ月を要している。

(2) 中国における災害ボランティア活動に伴う防除体制の現状

海事局船舶監督所からのレポートによれば、中国においては、F号の事故を代表的事例とする比較的規模の大きな流出油災害の発生に際し、一般市民等による無償の油回収活動、すなわち災害ボランティア活動がたびたび行われてきたという。

 

 

 

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