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しかしながら、同計画はもともとナホトカ号事故のような、外洋における大規模な油汚染事故を想定して策定されたものではなかった。そのため、事故発生直後の即応体制、関係機関の緊密な連携及び個別の具体的な役割分担等が十分に明確化されておらず、種々混乱等を招いた。当該問題は、我が国がナホトカ号事故を通じて得た最大級の教訓の一つであったと言える。

我が国政府は、ナホトカ号事故が国民生活に与えた事の重大性に鑑み、事故発生直後の平成9年1月24日、「ナホトカ号流出油災害対策閣僚会議」のもとに、関係省庁の課長級で構成される「大規模油流出事故への即応体制プロジェクトチーム」を設置、1]情報収集及び通報・連絡体制の充実・強化、2]関係機関における即応体制の充実・強化、3]迅速かつ総合的な油防除実施体制の充実・強化、以上の三つをテーマとした検討を重ねた。そして、同年9月24日に報告書として検討結果を取りまとめている。

同報告書では前述の教訓を踏まえた上で、国家緊急時計画の総合的な点検が行われており、同計画見直しの必要性が提起されている。そのため海上保安庁等が中心となり関係省庁と協力のもと、当該検討結果を踏まえ作業を進めた結果、同年12月19日、平成7年12月15日に作成された既存の国家緊急時計画は改訂されるに至った。

改訂された国家緊急時計画(巻末の「参考資料1」を参照)では、油汚染事故への準備及び対応の両面に関し、ナホトカ号事故で得た教訓を踏まえ、即応体制の充実・強化に向けた種々改善が施されている。その一つとして本調査が着目すべきは、新たに災害ボランティア活動に関する記述が加えられた点である。

(3) 国家緊急時計画における災害ボランティア活動の関わり

前項で述べたように、平成9年12月19日、ナホトカ号事故を教訓として改訂された国家緊急時計画には、新たに災害ボランティア活動に関する記述が加えられている。

すなわち、第3章「油汚染事件に対する対応に関する基本的事項」、第5節「油防除対策の実施」の4項では、海岸漂着油の除去措置の実施に関し、原則として原因者にその義務を課すことを確認している。その一方、関係行政機関、地方公共団体及び区域管理者(港湾、漁港、河川及び海岸の管理者等をいう。)に対し、必要に応じ、協力してその措置の実施を行うことを求めている。

さらにその場合において、必要な措置を地元住民、ボランティア等の協力を得て実施する機関等は、健康管理のための体制整備ほか、円滑な防除作業が実施されるよう必要な支援体制整備に努めることを求めている。

 

 

 

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