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この報告書には、異国種は、ひとたび定着すると急速に広がる可能性があることも銘記されている。“ひとたび種が定着するとそれを除去することは不可能であり、定着生物を制御するためには多額の費用を要する場合がある。五大湖に侵入したZebra mussel(カワホトトギスガイ)の被害への対応にカナダ/米国が要する費用が、2000年までで50億米ドルと推定されているのが好例である。”

この報告書では、日本の海草Undaria pinnatifida(ワカメ)が豪州タスマニア東岸に沿って急速に広がってアワビ産業に壊滅的影響を与え、さらに、カキやムラサキイガイ(二枚貝)養殖場に脅威を与えていることも強調している。

また、こうした例や他の事例にもかかわらず、“バラスト水問題の重大性が、いまだに十分理解されておらず、”また、1991年に採択されたガイドラインも、広範囲には実施されていないとも述べている。

報告書では、大きく分けて2つの活動方針を推奨している。すなわち、できる限り多くの国々によるバラスト水ガイドライン実施を確保することと、バラスト水の管理実施及び処理工程に関する調査を継続することである。

当該報告書審議の結果は、1991年採択のガイドラインに基づいた、決議A.774(18)船舶バラスト水・沈殿物排出による好ましくない生物・病原体侵入防止のためのガイドラインの、1993年11月IMO総会による採択に結びついた。

総会決議としてのガイドライン採択は、MEPC決議よりも重要性が高くなる。加えて1993年ガイドラインは、海洋環境保護委員会(MEPC)及び海上安全委員会(MSC)に対し、当該ガイドラインを、“MARPOL 73/78への新付属書のためのベースとしてのさらなるガイドライン開発”との観点で見直しつづけるよう要請した。MARPOL 73/78条約の一部として、国際的に適用可能な法規制策定のための検討を継続することを要請していたのである。

1993年以降、バラスト水作業部会は、規則案の作成作業を継続してきている。この作業部会では、この問題に注目するようになった個々の国及び非政府組織からの参加者のレベルも高くなり、MEPC会期における主要な要素となっている。

 

1997年に採択された最新化ガイドライン

 

MEPCは1997年3月、後に1997年11月のIMO第20回総会で採択されることとなるバラスト水に関するガイドラインの最新版(決議A.868(20)有害水生生物・病原体の移動を最小化する船舶バラスト水の制御・管理のためのガイドライン)案に合意を見た。

当該改正ガイドラインは、バラスト水と共に有害生物を船内に取り入れる機会をいかにして減少させるかという点を含んだ、バラスト水問題へのさらなる取り組みを勧告している。

 

 

 

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