ドイツは、専門家の調査では高速のWIGクラフトがCOLREGsの操船規則に準拠できるか疑問であると懸念を表明し、またオランダは、大型WIGで約100m、中型で約30m、小型では数mのジャンプが可能との性能に触れ、小型では上空への回避が困難であるとの懸念を表明した。
今次会合ではロシア提案の改正案分を殆ど審議することなくMSCに報告されることとなり、審議終了予定である次回会合において上記懸念等を踏まえた最終検討が行われることとなった。
(11) 高速船関連
デンマーク、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、中国、IMPA及びIFSMAは、高速船を識別するための灯火を追加することは、船舶の操縦性能を基準とした現行のCOLREGsの考え方を外れるものであり、その場合は航法規定を改正する必要がある旨指摘した。また、小型船等との衝突回避については、レーダーリフレクタ等の基準を拡大することで可能である旨、ドイツから発言があり、ノルウェーがこれを支持した。
しかしながら、灯火のみの改正だけで良いとする香港、英国、カナダ、灯火と航法規定は関連しており何れも改正する必要があるとするドイツ、オランダ、ISAFに意見が分かれ、結論に至らなかったことから、議論は次回のNAV46へ持ち越されることとなった。
(12) SOLAS V章の改正(海図関係)
プレナリーにおいて、IHOから改訂ドラフト(NAV42/23/Add.1、NAV43/wp.4、NAV45/5)に対し、イタリア(MSC69/5/3、NAV44/5/10)及び米国(NAV45/5/9)から修正提案があり、イタリア提案についてはIHOメンバー国に意見照会を行ったことが報告(NAV45/5/2)された。続いて米国は、自らの提案(海図定義から「official」の削除等)に係らずオープンな議論を求める旨発言したところ、ドイツは海図定義から「official」を削除した現行ドラフト修正案を提出した。これに対し、ノルウェー、オーストラリア、イタリア、デンマーク、カナダ、英国及び我が国がドイツ提案の支持表明を行った。我が国は対処方針に従い、現行ドラフトがベストと考えるが、「official」、「status」等が実質保持されているドイツ提案は受け入れることができる旨発言した。
審議はWGに移り、概ねドイツ提案に基づき細部の審議に入ったが、ここではフランス及びブラジルが「official」の復活を主張した。しかし、IHB、デンマーク、ノルウェー、イタリア及び英国が反論し、フランス提案は退けられた。
再度審議はプレナリーに移り、DGが作成した改訂ドラフト(NAV/wp.1/Add.3)に基づき検討中にコロンビアが、スペインを含む中南米諸国11ヶ国代表として演説し、海図定義への「official」の復活を強く求めた。
コロンビア提案を中国、インドが支持した後、IHOとコロンビアは結局、現行ドラフトのnavtical chartの前に「official」を付加した文案でMSCに提出し、IHOは次回MSCまでにIHO特別会議等の機会を利用して調整を図ることで合意した。