真正面からの強風、波浪は、大きなピッチングや青波の打ち込みなど船体への影響が大きく、無理して「突っ張る」と危険を生じます。
1 危険性
(1) スラミング(slamming)
船体前部船底に波による衝撃を受け船体が急激な振動を起こす現象です。その衝撃により船体は過度の応力を受け、船首部船底に損傷を受けることがあります。
(2) 波の打ち込み
甲板上への波の打ち込みは、海水が自由水となって復原力の損失を招きます。
波による衝撃は上部構造物や甲板積貨物の固縛索具を破壊し、また波による積荷の移動などにより耐航性、安全性を著しく低下させます。
平成9年7月、8,000トンクラスの貨物船が台風接近の荒天時に、船首部に大波を受け、操舵室前面ガラスが破損して、海水が流入し操船不能となった事例もあります。
(3) プロペラの空転(racing)
プロペラの一部が周期的に波面から露出すると回転変動、振動により、プロペラ翼の損傷を招いたり軸系および機関に悪影響を与えるおそれがあります。
2 安全航行の措置
1] 波浪を正船首から受けないように、針路を20〜30度程度変えて保針する。
2] 速力を落とす。
3] 保針をするための操舵は小刻みに慎重に行う。
4] プロペラ空転に対しては、機関室と連絡をとり回転数を調整する。
5] 空船の場合には、出港前にバラストを搭載する。
6] 続航困難なときは、舵効を保持できる最小の前進速力で風浪に立てる。