濃い霧の中の航海ほど神経を使う航行はありませんよね。
日本周辺は霧が発生し易く、三陸沿岸の広域にわたる濃霧、北海道の時化の中での濃い霧、瀬戸内海の島々を覆う霧などは、航海者には厄介この上ない事象です。
レーダーなくしての霧中航海は考えられませんが、レーダーのみに全てを頼ってはいけません。昔から言われている五感を働かすことも重要です。
1 五感の活用
五感とは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚を指します。
船影、航海灯、発光による注意喚起信号などの把握は視覚により、霧中信号、後進の汽笛信号、波の砕ける音などは聴覚により、磯の香り、煙の匂いなどは嗅覚、温度の急激な変化などは皮膚感覚(触覚)によりますが、さて味覚は海水の塩分濃度でしょうか。
要するに、霧の中では窓を開け、船橋内を静粛にして、あらゆる感覚を研ぎ澄ませてかすかな兆候をつかみ、衝突や座礁を防ぎなさいということです。
現在でも決して五感をないがしろにしてはいけません。レーダーの活用と五感とを補完しあってこそ安全が保たれます。
また、相手船にとってもこちらの船の動静を視覚的、聴覚的に把握できれば相互に安全となるので、こちらからも灯火の点灯、投光、音響により積極的に働きかけることが重要です。
2 レーダーの活用
視界不良時には、レーダーによる周辺状況の把握を継続的に実施する必要があり、特に接近船舶の掌握、衝突の恐れの判断に失敗は許されません。