イベントツリーの概要
この手の話は、やっていることの全体像が分からないとなかなか分かりづらいものです。そこで限られた誌面ではありますが、まず始めにイベントツリー手法の概要を簡単に説明します。
イベントツリー手法の基本的な手順は次のようになります。図1のバス事故の例を見ながらご覧下さい(この例は説明のために単純化しています)。
1] 情報収集
調査対象に関する情報を幅広く収集します。例では、バスの事故について情報収集を行います。そして、収集した情報を詳細に検討し、検討対象の全体像とその本質を理解します。
2] 分岐項目の選定
次に、事故にとって重要な影響を与えるような、鍵となる項目を選定します。例では「暴走対向車に出会うこと」「よけきれること」「ブレーキの利き具合」であるとします。
3] イベントツリーの作成
2] をもとに、イベントツリーを作成します。学生時代に確率を勉強したことのある方は、場合分けのための樹形図を思い出す方もあるかもしれません。大ざっぱにいって、イベントツリーは樹形図の巨大なものと思っていただいても結構です。
ツリーの一続きの枝のことをシーケンスと呼んでいますが、例では1] 〜4] の四つのシーケンスが求まりました。
4] 分岐確率値の推定
イベントツリーの各分岐点で、どちらへどのくらいの確率で分岐するかを推定します。例では、枝の上に書いた0.95' 0.05などが確率です。なお、枝の上下の確率を足すと、必ず1になります。
5] 被害の推定
それぞれのシーケンスで、どのくらいの被害がでるのか推定し、イベントツリーに記入します。例では、けが人の数が被害に相当し、〇、〇、四、九人となっています。
6] 発生確率の計算と集計
各シーケンスの進展に沿って分岐確率を掛けていき、シーケンスごとにその発生確率を計算します(6]a)。