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タイタニック号事故は起こり得ない悲劇だったか ?

確率論的安全評価法による解析

運輸省船舶技術研究所

松倉洋史(まつくらひろし)

三友信夫(みとものぶお)

松岡猛(まつおかたけし)

 

あなたがタイタニック号に乗っていたら

 

タイタニック号の沈没事故ほど有名な海難事件はないでしょう。ジェームズ・キャメロン監督の映画「TITANIC」は大ヒットを記録しました。また、一昨年には海中からの船体引き上げもあり、世間の注目を集め続けています。

「あの海難事故は起こり得るはずのないものが起きてしまった非常に不幸な事故だ」、「いや、あれは起きて当然の事故である」などといろいろなことがいわれていますが、いったい本当のところはどうなのでしょうか。

実は、それは確率論的安全評価法PSA(Probabilistic Safety Assessment)という方法を用いて評価することができます。

この方法は複雑で巨大なシステムを分析するための方法で、さまざまな分野で成果をあげてきました。最近ではIMO(国際海事機関)によってFSA(Formal Safety Assessment)という形で船の世界に取り入れられつつあります。

ここでは、「もしあなたがタイタニック号に乗っていたら、確率的にいって一体どういう運命が待ち受けていたのか」を、確率論的安全評価法によって求めてみることにします。

 

確率論的安全評価法とは

 

本題に入る前に、確率論的安全評価法について簡単に説明します。

これは先ほども述べたように、複雑で巨大なシステムを分析するための方法です。化学・原子力プラントや宇宙機・航空機の開発や信頼性評価に用いられて高い成果を挙げてきました。

例えばスペースシャトル・チャレンジャー事故の後、アメリカ航空宇宙局(NASA)によって、シャトルシステムの安全性解析に用いられ、安全性の向上に非常に大きな役割を果たしました。

この方法によってさまざまな安全性の解析ができます。例えば解析の対象となるシステムが故障する確率を求めることが可能です。「このシステムが故障するのは○○年に一回である」、「ネックになっているのは××の箇所であり、この点を改善するのが最も費用対効果が大きい」というような分析結果を得ることが出来ます。

さて、一口に確率論的安全評価法といいますが、それは種種の解析手法を組み合わせて総合的に評価する方法です。活用されている手法としては、従来からさまざまなものが開発されています。

イベントツリー手法・フォールトツリー手法・信頼性ブロックダイアグラム手法・マルコフ解析手法・・・そしてGO-FLOW手法などです。

このうち、最後にあげたGO-FLOW手法は当研究所で開発された手法であり、おかげさまで高い評価を得ています。興味のある方はぜひ次のホームページをご覧下さい。(http://www.nmri.go.jp/safe/studies/goflowj0.htm)

今回は、確率論的安全評価において広く使われているイベントツリー手法を用いて解析を行ってみました。

今回取り上げなかったより複雑な要因まで考慮する場合には、GO-FLOW手法等、最新の手法を用いることになります。

 

 

 

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