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東シナ海では北緯三〇度より南の海域で、吹走距離が一、〇〇〇キロメートルくらいとなり、波は六メートルくらいまで発達します。

さて、前述した福江島のある海域がどんな位置にあるか確認してみましょう。冬型気圧配置になって福江島に北西の季節風が吹く場合、風上にちょうど朝鮮半島があるため、吹走距離が短くなり、そのため、同じ風速でも、波が高くならないと考えられます。このことを北西の季節風が吹いていた一九九九年一月六日から九日にかけての福江島と経ヶ岬の波浪計観測値の時系列図(第3図)で見てみます。両地点で同一の風が吹いたとは限りませんが、全般的に、福江島より経ヶ岬のほうが高い波を観測しています。七日から八日にかけて、経ヶ岬では四、五メートル以上になっていますが、福江島では最大で三・五メートル程度でした。この差の理由のひとつは、吹走距離の差と考えられます。

 

おわりに

 

ここでは冬型気圧配置による話をしてきましたが、低気圧が発達しながら太平洋に移動して行く時、その低気圧自体が非常に発達すれば冬型気圧配置の場合に限らずその低気圧近辺では高波となることもあります。また、夏から秋にかけては発達した台風が接近することもあります。日本近海ではいたるところで季節を問わず波が高くなることがあり得ますが、冬季に三〇キロトン(約一五m/s)程度の風やそれ以上の風が吹くことは珍しくありませんので、それだけ冬季には高波が発生し易いといえます。

気象庁が発表する海上予報、警報の他、JMH(気象庁第一気象無線模写通報)で放送している「外洋波浪実況図(AWPN)」、「沿岸波浪実況図(AWJP)」、「外洋波浪二十四時間予想図(FWPN)」および「沿岸波浪二十四時間予想図(FWJP)」も有効に利用して海難防止に役立てていただきたいと思います。

 

図3 経ヶ岬および福江島の沿岸波浪計による観測値

1999年1月6日〜1月9日 太線:経ヶ岬 細線:福江島

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