一方、東シナ海に面している福江島(長崎県)は冬型気圧配置の時の記録は一二例で、台風来襲の時の記録が八例観測されています。福江島では、冬型気圧配置の時には六メートルから五メートル程度の高波しか観測されていません。福江島は日本海に面している他の波浪計とは高波を観測する状況がどうも違います。このあたりのことについては、あとで少し考えてみたいと思います。
ちなみに、太平洋に面している尻羽岬(北海道)、江ノ島(宮城県)、石廊崎(静岡県)、佐多岬(鹿児島県)、佐喜浜(高知県)や喜屋武岬(沖縄県)では、上位二〇位の高波は、夏の台風や、初春ないしは晩秋の非常に発達した低気圧を原因としたものがほとんどです。
冬型気圧配置と波浪の発達
波浪は1] 風速が大きく、2] その吹き続く時間(吹続時間)が長く、そして3] その距離(吹走距離)が長いほど発達し、波高は大きくなります。冬型気圧配置が続くと、強い季節風が長時間吹くこととなりますので、波浪が発達するようになります。
風が強くなる海域が異なりますと、それに伴い波浪の発達する海域も異なってきます。日本近海で冬型気圧配置になる前に、多くの場合、東シナ海の中部か日本海の中部から北部、またはその両方の海域で低気圧が発生します。
日本海で発生する低気圧は、東北地方または北海道を越えてオホーツク海または太平洋へ移動します。この時は、日本海の中部から北部で北西の季節風が強く吹きます。吹走距離の長い東北地方から近畿地方の日本海沿岸では高波が発生します(図2)。
東シナ海で発生する低気圧は多くの場合、本州南岸を経て関東東方に進むにしたがい、急速に発達して行きます。この時は東シナ海や日本海南部で北西の季節風が強く吹きます。東シナ海に吹く季節風は、北西から北、そして北東に風向を変えながら南西諸島や台湾の南まで吹き抜るため、吹走距離が長くなり、東シナ海南部の海域では波が高くなります。