海の気象
冬型気圧配置の高波
山中浩(やまなかひろし)
(気象庁気候・海洋気象部海上気象課 技術専門官)
はじめに
海に四方を囲まれているわが国では、漁業や海運、レジャーなどの活動に波浪は大きな影響をおよぼしています。
冬季、日本海や東シナ海などで低気圧が発生することが多いのですが、発生初期にはまだ十分発達していないので、これらの海域では風も弱く、波が高くなるということはあまりありません。しかし、低気圧が東に移動するにつれて発達し、オホーツク海や日本のはるか東の太平洋に至るころには猛烈に発達することがあります。大陸には高気圧があって、西高東低の冬型気圧配置になり、季節風が強くなると、日本周辺の海上では波が高くなります。
ここでは、船舶の運航や沿岸での海洋レジャーの安全に役立つように冬型気圧配置の高波について説明します。
過去に観測された高波
現在、気象庁では全国十一カ所に沿岸波浪計を設置して波浪観測をしています(第1図)。
各沿岸波浪計で観測された高波の上位二〇位の記録をみますと、日本海に面している松前(北海道)、温海(あつみ)(山形県)、経ヶ岬(京都府)、鹿島(島根県)などでは、ほとんどが冬季に観測されています。例えば、経ヶ岬での高波の波浪記録(一九七六年から一九九八年)をみますと、一位は波高八・五メートルで、冬型気圧配置の時でした。上位二〇位内では、六メートル以上の高波が観測され、その内一九例が冬型気圧配置の時でした。松前、温海や鹿島についてみても、波高八メートルから五メートルになりますが、ほとんど冬型気圧配置の時に観測されています。