ついでに申しますと、日本水路協会が広報用(無料)として毎年大量に作成しております索引図(全紙大・表裏)も、このたび、はじめて英語版を作成しまた。役立つことを願っております。
なお、海図等に関する情報は、日本水路協会のホームページ(アドレスhttp://www.jha.or.jp)をご利用ください。
2] 外地に販売拠点を開く
手元にありますように外国版海図定価一覧(平成十年十一月)には、一〇カ国の海図の刊行国における定価と日本国内定価が記載されています。子細は割愛して最右翼の英国版は、中でも最高の定価ですが日本版と大差ありません。
なお価格に関連して、「ユーザーは海図を選択する理由として、価格より早く入手できることを優先している。つまり、航行安全を重視している」という声もある会合で聴きました。傾聴に値する発言です。
さて、懸案の販売体制ですが、全世界に販売拠点を展開している英国版には抗すべくもありませんし張り合う必要もありませんが、上記のように、外航船にあっては日本人乗員の減少傾向が続く実態にかんがみて、少なくとも日本への幹線ルートの位置に、販売拠点を開くことを模索しております。
さっそく行動を起こしてはおりますものの、前記で触れました種々の困難があり一朝一夕にはまいりません。アップツウデートはとりわけ難問ですが、その緩和策として、改補の箇所が多い海図の改版周期を早めるなどの要望(対水路部)を行いつつ(前記の改版周期の短縮化はその一環)、具体的に検討中でありますので、当面は、鋭意努力中ということでご容赦いただくことにします。
おわりに
ある説によれば、全世界の(海図使用の)およそ七割を英国版が占めているとか。わが国の周辺海域においても、それを下回る数字ではありません。こうした実情を異常な状態あるいは非常事態と捉えるか否かは異論のあるところでしょうが、周辺海域ならともかく港泊図までが「日本版離れ」を起こしているのなら、これはやはり非常事態と申さねばなりません。なぜなら港泊図は英国版より日本版の方がより大縮尺であり、当然最新維持の点でも迅速性、詳細さの点でも優位にあるはずですから、これを使っていただくのが当然でありましょう。
こんにち、「外国船舶の監督事務(PSC)」(運輸省海上技術安全局所管)で、最新版海図の携帯についてチェックを行っております。また海上保安庁においても海図の適正使用を指導しております。こうした点を考慮すれば、英国版に蚕食を許していること自体が問題であり、単に売り込み上手下手で片づけてはならない重大事と見なければなりません。
しかし、わが国の海図を使っていただくからには、前で述べた内容および販売上の問題点を早急に見直し、改善を図る必要があります。こうした事柄に、今後一層積極的かつ弾力的に対処いたす所存ですから、ユーザー側からのごしったとご支援を切望いたします。
春一番
冬から春に移る立春を過ぎたころにはじめて吹く暖かい南寄りの強風のことを「春一番」と呼ぶ。もともと対馬海峡の壱岐で春に入って最初に吹く強い南風のことをいい、この風が吹き通ってしまうまでは漁師たちは海へ出ることを恐れたという。ハルイチまたはカラシバナオトシと呼んだのはこの時期がカラシバナ(菜の花)の花盛りで、この花を吹き飛ばしてしまう風だからである。一九五〇年代後半からマスコミでこの言葉が使われ出してからは春一番は壱岐だけのものでなくなった。冬型の気圧配置が崩れて温帯低気圧が発達しながら日本海を北東に進むときに吹く風だが、そのあとにも冬の季節風が残ることがあり、彼岸のころまでには、春二番、春三番と繰り返しながら春の訪れを告げ、春はたけていく。(杉浦昭典著「海の昔ばなし」から抜粋)