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また、日本の海図が売れなくなった分、外国版、ことに英国海図が売れ行きを伸ばしていることが、これも予想の範囲で確認できました。

需要減少を外航船の内部事情ひとりに負わせているわけではありません。内航船にも、原因の一端はみられます。一九七八年度は約七、七〇〇隻であっものが、一九八五年度以降は年々減少して一九九七年度には約六、〇〇〇隻まで減少しております(図-2)。

船腹量では、代替建造時に大型化したことで一九八〇年代に比べ一九九五年はむしろ増加しておりますが、海図の使用枚数はトン数ではなく隻数に左右されますから絶対隻数の減少が需要減少の大きな要因となってます。

さらには、外航・内航を問わず、船舶の運航形態が変わり一定の航路に就航する船舶が多くなっており、一船で必要とする海図の枚数は減少しております。

およそこんな事態が、需要減少に大きく関与しているように思われます。こうした構造的な変遷は、私どもには抗じ難いことでいかんとも仕様の無いことと言わねばなりません。

 

需要減少の原因(内因)は何か ?

 

(1) 海図の内容

売れ行きの減少をユーザー側の内部事情ばかりにかこつけては片手落ちというものでしょう。そもそも海図自体に問題はないのか ?

前記の「海図市場調査」でも、それに関した指摘があります。日本版と英国版(BA版)および米国版(NIMA版)の三版を取り上げ、掲載情報についてそれぞれ比較してあります。異なる情報の代表的なものとして「日本版海図には水先人乗船地点、日本船長協会の自主設定航路の記載がないが、英国版は水先人乗船地点は図示により、自主設定航路は記事により記載している(NIMA版は後者のみ記事で)」とあります。また「日本版ではローマ字は訓令式であるが、英国版ではヘボン式の表示」とも指摘しています。

海図の掲載情報については、基本的な事柄は国際水路機関(IHO)の決議事項や技術基準があり各国ともそれに則って掲載しますからほぼ同様と見てよいのですが、それに準ずる利便情報となりますと、やはりお国柄で多少の違いが現れます。水先人乗船地点はそれに属する項目ですが、かつての判断では、活用の頻度とその地点がいつも順守されているとは限らないということで省略されたものと推測されます。

本来地図は記号、略号などを用いて簡素で見やすい表現方法が採られています。情報は盛りだくさんである方が一般的には受けますが、海図の場合は運航中に見、また夜間は照度の低いチャートルームで見るなどの制約から明るさ見やすさが要求されます。したがって情報過多はマイナスとなります。ただでさえ日本の海図はローマ字併記というハンディを背負っておりますから。

ともあれ、調査報告書は、比較した結果「全体的には日本版と外国版とに掲載情報、内容に大差はなく、これが海図の販売に与える影響は小さいと考えられる」、その一方で「しかし、外国人船員にはほとんど理解できない日本語が併記されている点で、英国版になれている外国人船員にとっては煩わしく感じられるものと思われる」とあります。

(2) 販売上のあい路

外国船関係者から「日本の海図をぜひ、と言われても欲しいときに欲しい海図が手に入らない・・・」といった苦情があっては、現状では返す言葉がありません。それは多分に、国外においてそうした要求が発生するのですが、海図販売の難しさで、海図はユーザーの手に入るまで最新の内容に維持してなければならないからです。

海外においては九月末現在、釜山市およびソウル市、高雄市において最新維持の態勢を執っての海図販売(販売解約に基づく)が行われておりますが、同様の拠点をその他の国に開くには、アップツウデートのほか輸送料金の問題もあります。少部数では高価につきますし、大量輸送では改補(最新維持)の負担を増大させます。

 

改めるべきは改めて

 

(1) 記載情報の見直し

編集に関したことは一元的に官側に属することではありますが、日本水路協会が担う複製・頒布事業とは表裏の事柄ですからお許しをいただき述べることにします。

 

 

 

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