日本の海 日本の海図
(財)日本水路協会
審査役 児玉徹雄(こだまてつゆう)
まえがき
漠然とした表題ですが、言外に「日本の周辺海域では日本の海図を」の意を込めたつもりです。
率直に申して、海図(紙海図)の需要が年々減少していることに危機感を募らせております。考えられる原因は何か、これらに対して今後はどう対処すべきか。外国版、ことに英国版海図を大いに意識しながら話を進めます。
海図の需要とわが国外国商船隻数の推移
図1は、日本の船会社が運用している外航船のうち、日本籍船と外国用船の隻数と海図需要(民需)の推移を重ねたものです。海図の需要では、棒グラフの全体像がなだらかな山形を成していますが、現在に需要量は奇しくもこの統計の最初のころ(一九五〇年代後半)のレベルにまで落ちています。
かつて重厚長大型の産業構造であった時代には海運界は隆盛を極め、また当時は海洋の利用・開発も盛んでした。一九六九年から五年連続して四〇万枚を超えたのは、そうした社会現象が背後にありました。中でも五〇万枚に達した一九七四年は海上交通安全法が施行された翌年に当たり、多数の改版があった年です。
漸減傾向に転じて、一九八四年に一時的の回復が見られるのは、このころ、国際航路標識協会(IALA)の浮標式の変更があり、それに伴った改版の影響です。そして最近、一九九六年に下げ止まったかに見えたのは、実は消費税が三から五%へ引き上げられるに際した駆け込み需要でした。その後は、依然として減少の一途にあります。