疑問を抱いたら、その疑問をちゅうちょなくチームに発信することと発信しやすい雰囲気をつくることが重要です。「アレッ、変だ」という一言さえ口に出せば、本人のみが抱いていた疑問をただちに船長をはじめチーム全体が共有する疑問へと変化させることができます。
●報告(進言)しようとしたが、今、船長は忙しそうだ。後にしよう。
報告のタイミングは、結構難しいものです。船長はこうした部下の様子にも気配りする必要があります。
(4) 方針変更時のブリーフィング
操船計画を変更したが航海士への説明がなかったため、航海上は元の操船計画しか知らなかったケースがあります。
計画変更が求められるときは、通常船長にとってもあまり余裕がもてない状況になっています。このような場合でも、寸暇をとらえてブリッジチームに説明すべきであり、また、チームメンバーは、疑問があれば必ず進言する必要があります。
研修効果
研修効果は、受講後の実船での対応をみなければ正確に判断することはできませんが、少なくともヒューマンファクターに関する意識や事故に対する安全意識が向上したことと、改善すべき行動を各自が認識したことは、研修を通じて感じることができます。それは、受講生の意見からもある程度推察することができます。
受講生が、研修を通して最も印象に残り、かつ、乗船した際に気をつけるべき点を標語形式で表現してもらった例をいくつかご紹介します。
●良好なコミュニケーション(Good Communication)
●進言と応答(Challenge and Response)
●状況認識(Situation Awareness)
*状況の変化に気づくことの重要性
●チームワーク
●ストップルック(Stop Look)
*不安を抱いたら停船し、冷静に状況を把握する
●スキルアップ(Skill up)
●余裕
●仕事キッチリ
●疑問をもったら声に出す
●不惑進言、有惑進言
これらを一年間の受講生(一八一人)について集計したものが次表です。
職種別にみると、船長、一等航海士といった上位職では、マネージメント要素に大きな関心が示されていますが、二、三等航海士では、「その他」が多く、十分に的が絞られていないことが分かります。基本的な知識と航海技術を習得することで手一杯の状態といえます。
船長、一等航海士では、このような二、三等航海士が加わった研修の方が実船の現状に近く、自らの研修効果を高めることができるとする意見が大勢を占めています。一方、経験の浅い二、三等航海士にとっては、このような研修を反復受講することによって航海技術とマネージメント能力を段階的に高めていく必要があると考えられます。
さらに、研修後のアンケートから、船長の「乗船時の方針」について述べた一例を次に示します。