写真1は気象衛星「ひまわり」の可視画像で、一九九七年五月四日九時の雲の分布です。西日本は晴れの領域が広がっていますが、播磨灘や伊予灘および対馬海峡と山陰沖の日本海、広島県の内陸部などに見られる雲は霧と判断されます。
同日九時の地上天気図(図1)によれば、前日西日本を通過した低気圧が関東の南東沖まで進み、西日本では晴れのところが多くなっていますが、このように前日が雨で翌朝がよく晴れ上がった日は、霧が発生しやすいパターンといえます。
この写真ではみられませんが、夜から明け方にかけて発生した陸上の霧が、陸風によって沿岸の海上に運ばれる場合もあります。播磨灘では、ロール状になって液状的に海上へ押し出される例が時々見られます。背後に霧の発生しやすい地形の沿岸部では注意が必要です。
瀬戸内海の備讃瀬戸での霧の発生日数について、塩田氏(一九八〇)が行った一九七五〜一九七八年の四年間の調査結果を図2に示します。晴れ霧と雨霧の発生は、春から夏にかけてがほとんどとなっています。このうち晴れ霧の割合は約三五%で、七月が最も発生しやすく雨霧の発生よりも多くなっています。
霧の予報
霧の発生には、1] 下層の湿潤な空気の存在2] 湿潤な空気の冷却(寒冷な空気との混合、放射による冷却、低温な海水による冷却)3] 低い高度の逆転層(*2)の存在4] 地上の風が弱いなどの条件が必要です。
これらの気象条件は比較的広範囲の状態として数値予報で予想されます。しかし、実際の霧は複数の原因が重なって発生している場合が多いことや、地表面の状態は時間的・地域的な変化が大きいため、実際の予報では、数値予報に加えてこれまでに霧が発生したときの気温や風向・風速の分布、地形の効果などを総合的に考慮して行っています。
おわりに
海上の霧は船舶の航行に大きな障害となることから、霧の発生予想は予報業務において重要な要素となっています。海上の霧に対しては、視程が五百メートル以下となる霧が発生しているか、あるいは発生が予想されるときには沿岸の海域については地方気象台が「濃霧注意報」を発表します。また、沖合については海洋気象台等が「海上濃霧警報」を発表して警戒を呼びかけています。
船舶やプレジャーボートなどにおいては、気象台が発表する気象情報とともに、瀬戸内海で発生する霧の特性に留意していただき、航行の安全を図っていただきたいと思います。
(*1) 放射冷却とは、地表面から赤外線が放射されて温度が下がる現象をいう。
(*2) 逆転層とは、上空に行くほど気温が高くなっている気層をいう。