海の気象
瀬戸内海の霧
山下順正(やましたのぶまさ)
(神戸海洋気象台観測予報課予報官)
はじめに
霧は、無数の微細な水滴が空中に浮遊している大気現象で、雲が地表に接しているものといえます。気象観測では、水平視程が一キロメートル未満の場合を霧と呼んでいます。
霧は、その発生原因によって移流霧・放射霧・混合霧・前線霧などに分類されています。また、単に降水の有無により晴れ霧・雨霧といった言い方もします。
瀬戸内海の晴れ霧は発生が局所的であったり、急速に視程が悪化することがあり、特に注意が必要です。ここでは、瀬戸内海で発生する晴れ霧を中心に説明します。
瀬戸内海を取り巻く環境
瀬戸内海は中国山地・四国山地などに囲まれた大きな盆地としての形状をしており、海陸風や山谷風の影響を局地的に受けやすい地形となっています。また、多くの島や海峡が存在する複雑な地形のため、島の周辺や海峡では、潮流により水深の深い部分にある低温な海水が湧き上がり、海表面の温度を下げる働きをします。瀬戸内海を取り巻くこのような環境は、瀬戸内海の霧の発生に複雑な影響を及ぼしています。
瀬戸内海の晴れ霧
瀬戸内海の晴れ霧は、海表面付近の湿った空気(水蒸気)が、夜間の放射冷却(*1)や冷たい海水によって冷やされ凝縮することで発生します。晴れ霧の層の厚さ(高さ)は六〇メートル程度のものが多く見られ、日中は層の厚さが薄くなったり、消散したりします。
