海上保安庁におけるコンピュータ西暦二〇〇〇年問題への対応について
海上保安庁警備救難部航行安全課
一 海運分野の二〇〇〇年問題
海運分野におけるコンピュータ西暦二〇〇〇年問題(以下「二〇〇〇年問題」といいます。)につきましては、すでに、運輸省、各種団体、船舶所有者、船舶運航者、港湾運送事業者等において、鋭意対策が講じられているほか、主要七大港湾(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港、博多港)においては、港湾関係者により構成される「二〇〇〇年問題対策連絡会議」を組織し、相互に情報交換を行うとともに、対応状況をチェックすることにより、港湾全体としての機能を維持すべく対策が講じられています。
しかしながら二〇〇〇年問題については、外国船も含めたすべての船舶の機能障害を完全に防ぐことは困難であるといわれています。
二 二〇〇〇年問題で懸念される海難・事故
二〇〇〇年問題とは、コンピュータ・プログラムが二〇〇〇年以降の日付に対応していない場合に、システムが正常に機能しないおそれがあるというものです。
二〇〇〇年問題は船舶についても例外ではなく、船舶に設備または搭載された機器にマイクロチップ等が使用されている場合、それらのプログラムによっては、航行中や荷役中に異常が発生し、最悪の場合には運航停止といった事態に陥るおそれがありますが、その中でも特に、船舶が輻輳する海上交通安全法(以下「海交法」といいます。)の航路や港則法に定める特定港内においてこのような事態が発生しますと、乗揚げ海難の発生や他の船舶との衝突海難の発生が懸念され、自船はもとより、周辺を航行する船舶を含めた船舶交通に著しい支障が生じないとも限りません。さらには、油の流出や火災などの二次災害の危険も考えられます。
また、危険物荷役の際に、二〇〇〇年問題に起因して荷役設備に誤動作等の障害が発生した場合には、それが原因となり荷役中の危険物が港内に流出し、その結果、大事故につながるおそれも考えられます。
三 二〇〇〇年問題で懸念される海難・事故の防止対策
このため、海上保安庁では、二〇〇〇年問題の危険日とされている二〇〇〇年一月一日を前に、平成十一年十月二十九日、海上保安庁警部救難部長から海事関係団体等に対して、関係者に注意喚起を行い、事故防止対策について呼びかけることを要請する文書「コンピュータ西暦二〇〇〇年問題に伴う船舶の運航上及び荷役上の注意等について」を発出しました。
また、この文書では、海上保安庁として特に警戒すべき時間帯を「日本標準時の西暦一九九九年十二月三十一日午後九時から西暦二〇〇〇年一月一日午後九時までの期間、以下『特別警戒期間』といいます。(注1)」として設定し、船舶に設備又は搭載された機器にマイクロチップ等が使用されている場合であって二〇〇〇年問題に関する対策が不十分な船舶(注2)については、海交法に定める航路への入航を調整したり、港長に対する危険物荷役の許可申請等に当たり、不許可等とする対応を執り得る旨も併せてお知らせしています。
文書の内容を簡単にご紹介しますと、二〇〇〇年問題に関する船舶の運航上及び荷役上の注意喚起のほか、特別警戒期間に、船舶が海交法の航路を航行する場合、港則法に規定する特定港を入出港する場合、特定港で危険物荷役などを行う場合等に、一定の船舶については、事前に所定の通報をしていただいたり、IMOで定められた様式に準拠した質問状に回答して提出していただくというものです。