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4.1 シンガポール海峡の東側入口付近

(1) 西航時

ここではイースタン・バンク付近およびその北東方海域において、シンガポール海峡への入出航船、およびインドネシア、ベトナム方面への横切り船が錯綜(さくそう)し、巨大船がアプローチするには、厳しい交通環境である。

(2) 東航時

この場合は、深喫水船であるVLCCにとっては、イースタン・バンク付近では比較的浅い所があるため、UKC四メートルを確保する必要がある。また、西航時に述べたように入出航船、横切り船および漁船が錯綜するため、非常に注意を要する海域の一つである。

4.2 シンガポール海峡中部、特にシンガポール港付近

(1) 西航時

シンガポール港に出入りする船舶(特に注意を要するのは、錨泊していて急に動きだす船舶である)漁船(夜間および薄明時初期等において、無灯火の小型漁船等がいて、見えにくいことが多い)、小型漁船等が自由に行き交うため、バラスト状態とはいえ、変針のみでは避航効果は、あまり期待できないので減速(ときには増速)を行うことにより、避航を行っている。また、フィリップ水路を東航してくる、深水深航路しか航行できないVLCCとの関係にも注意が必要である。

(2) 東航時

P.Iyu Kecilから深水深航路の入口までは、小型漁船、横切り船(警戒水域だけではない)同航路との関係に注意しながら、深水深航路に入るためのよい位置を占位するのに万全の注意が必要である。深水深航路は、最狭部の幅が約六〇〇メートル程度であり、本船の長さをLとすると、1.8Lとなり、「港湾の施設の技術上の基準・同解説」において

・「比較的距離が長い航路で船舶同士が頻繁に行き会わない場合」に必要とされる幅員は1.5L

・「比較的距離が長い航路で船舶同士が頻繁に行き会う場合」に必要とされる幅員は2L

であるから、その狭さが理解していただけると思う。

また、この深喫水航路はVLCCにとっては比較的浅い所もあり、UKC3.5メートルを確保するため、潮汐等をにらみながら通過時間を設定することとなる。深水深航路においては、深水深航路しか航行できず、機関を使用するしか避航の方法がない深喫水船およびVLCCと漁船、小型船、反航する大型船の関係において厳しいものがある。

 

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鏡のようなマラッ力海峡を航行中のVLCC(外国船)

 

4.3 ワン・ファザム・バンク付近

(1) 西航時

ここでは、あまぞん丸浅瀬の南側を通航するが、小型船の中にはワン・ファザム・バンク至近を西航し、本船針路を横切る形で航行するものがあるので注意が必要である。

(2) 東航時

特に深喫水船である場合、最狭部幅約一五〇メートル程度ヘアプローチしなければならないので、潮流の把握等について細心の注意が必要である。またこの付近は漁船等が多く、魚網も散見される。

4.4 Tg Medang沖付近(東航時)

ここでは深喫水船は、二度の大角度変針を余儀なくされるため、自船の位置の確認、周囲の状況、特に同航船、横切り船、漁船の状況を十分把握しておくことが大事である。

4.5 その他

分離通航帯全域にわたり、漁船との関係、特に視界制限時において厳しい。

以上の4.1〜4.5については、今後ぜひその実態について調査がなされ、その実態の解析および対策についての検討がなされることを望む。

 

 

 

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