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マ・シ海峡の新通航方式

―導入後の状況と今後の問題点―

日本郵船株式会社

船長 松下良興(まつしたよしおき)

 

一九九八年十二月一日から、マラッカ・シンガポール海峡において、強制船舶通報制度(STRAITREP)が開始され、同海峡全域にわたる分離通航方式の導入に伴い通航規則も改正された。

その後、約一年を経過した今、強制船舶通報制度、同海峡を通航する船舶に対する規則、導入後の状況、今後の問題点などについて新制度を体験した船長が記す。

 

1 強制船舶通報制度(STRAITREP)

 

従来この海域では、Maritime and Port Authority of Singapore(MPA)によりシンガポール港およびシンガポール海峡を含む同港周辺海域を航行する船舶の安全を目的として、Vessel Traffic Information System(VTIS)が運用されていた。しかしこの方式は、

・任意参加であったこと

・対象海域がシンガポール周辺に限られていたこと

・通過通航についても動静報告を要請し、必要な航海情報を提供するということであったが、必要とされる報告を行っても、本当に必要な情報は得にくかったこと

等の問題があった。

そこで沿岸国であるインドネシア、マレーシア、シンガポール三カ国の共同提案により、STRAITREPが国際海事機関(IMO)の第69回海上安全委員会(MSC)において採択、導入され、従来のシンガポールVTISは廃止された。その概要は次のとおりである。なお、詳細は船舶通報10-26により海上保安庁から周知されている。

1・1 概要

(1) 対象船舶=総トン数三〇〇トン以上の船舶および全長五〇メートル以上の船舶等である。

(2) 適用海域=マラッカ・シンガポール海峡を含む100-40.0Eから104-23.0Eの間であり、マラッカ・シンガポール海峡の通航帯を含んでいる。

また、本海域は九つに区分され、それぞれにVHFチャンネルが割当てられている。通報は原則として各区域のVessel Traffic Services(VTS)当局宛にVHFにより行う。

(3) 通報項目

A=船名、呼出符号/C、D=船位/E=針路/速力/P=危険物/Q=欠陥/R=流出した汚染物質または危険物

(4) 通報位置

基本的には、STRAITREP適用海域のSTRAITREP運用区域(船舶通報10-26)STRAITREP報告地点によるが、詳しくは船舶通報10-26、3.3通報位置参照。

 

2 マラッカ海峡およびシンガポール海峡を通航する船舶に対する規則

 

今まで、分離通航方式はワン・ファザム・バンク、ホースバーグ〜シンガポール海峡および深水深航路のみであったが、マラッカ・シンガポール海峡全域に導入されたことに伴い、通航規則も改正された。主要な点は次の通りである。

2・1 定義

定義については、変更はない。

(1) 深喫水船=喫水一五メートル以上の船舶

(2) VLCC=一五万載貨トン以上の超大型原油油槽船

 

 

 

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