(3) 整流用灯浮標の設置による安全性の確保
平成九年七月に東京湾中ノ瀬西側海域で発生した「ダイヤモンドグレース号」の底触・油流出事故を契機として、平成十一年二月に、より一層の船舶交通の安全を図るため、中ノ瀬西側海域に整流を目的とした灯浮標三基を設置するとともに、巡視船艇による集中指導を実施し、新しい航行経路等の周知徹底を図った。
〔海洋汚染防止関係〕
海洋汚染の発生確認の状況等
平成十年に我が国周辺海域において海上保安庁が確認した海洋汚染発生件数は六九七件であり、昭和四十八年に統計を取り始めて以来、最少の件数となった。
平成十年に確認した海洋汚染の態様は、油による汚染は三八八件で、全体の五六%を占めている。排出源は、船舶からのものが大半を占め、排出源不明のものも、発見場所や浮流状態から見て、そのほとんどが船舶からのものであると推定される。
また、船舶からの排出と確認さた二八九件の原因は、故意および取扱不注意といった人為的なものが半数以上である。
油以外のものによる汚染は二八三件で、全体の四〇%を占めている。その内訳は、廃棄物二一一件、有害液体物質四六件、工場排水等二六件となっており、その原因のほとんどが故意によるものである。
赤潮は二六件で全体の四%を占めており、瀬戸内海(大阪湾を除く)、伊勢湾において多く確認されている。
海上防災と海洋環境の保全のための体制強化
平成九年一月の「ナホトカ号」、同年七月の「ダイヤモンドグレース号」等の大規模油流出事故を受け、流出油防除のための回収装置やデータベースの整備を進めた。
また、我が国周辺海域における海洋汚染の監視取締りや海洋環境の保全指導を行い、海洋環境の保全に努めている。
(1) 大型油回収装置等の整備および訓練の実施
外洋においても対応可能な大型油回収装置の整備や高粘度の油にも対応できる油回収装置等の防除資機材の整備を進めるとともに、運用訓練を実施した。
(2) 沿岸海域環境保全情報データベースの運用開始
油流出事故などの海難・事故災害発生時に必要となる情報を迅速かつ的確に提供するため、平成九年度から、油防除資機材の配備状況等の防災情報や海流等の自然情報などをデータベース化する沿岸海域環境保全情報の整備を行っている。
平成十一年四月からは沿岸海域環境保全情報のデータを油の拡散状況・漂流予測結果とともに電子画面上に表示できるシステムの運用を開始した。
今後、国および地方公共団体等が油防除措置等を行う場合に活用されることが期待できる。