また、海洋レジャー愛好者に対し、気象・海象の的確な把握や知識・技能に応じた活動についての事故防止指導等を常日ごろから行っている。
このうち、プレジャーボート、水上オートバイおよび遊漁船については、その種類ごとに、事故防止のための遵守事項を取りまとめたパンフレットを作成し、平成十年においては約二五、〇〇〇隻のプレジャーボート等を対象に訪船指導等の際の安全指導に活用した。
漁船に対する安全対策
平成十年の漁船の要救助船舶隻数は、六二二隻で、平成九年に比べ二二隻増加しており、依然として全要救助船舶一、七二六隻に占める割合は高く、三六%を占めている。
海難の状況を見ると、見張り不十分等の運航の過誤や機関取扱不良といった人為的要因によるものが、六七%を占めていることから漁船の海難を防止するため、関係者を対象とした海難防止講習会の開催、訪船指導の実施等により海難防止思想の普及の徹底を図るとともに、航法や海事関係法令の遵守、出漁前の整備点検、見張りの励行、気象・海象情報の的確な把握、救命いかだ等の取扱方法の習熟、相互連絡・協力体制の確立等の指導を行っている。
海難防止活動の推進
要救助海難の発生原因を見ると、見張り不十分、操船不適切等の運航の過誤や機関取扱不良といった人為的要因によるものが七四%を占めている。
こうした要因による海難を防止するためには、海難防止思想の普及・高揚ならびに海難防止に関する知識・技能の習得および向上を図ることが有効であることから、海上保安官の訪船指導、全国各地での海難防止講習会等(平成十年合計一、〇二六回、受講者約五三、〇〇〇人)を通じて海難防止思想の普及等を図っているところである。また、毎年期間を定め、官民一体となって海難防止強調運動を実施し、海事関係者のみならず広く国民に対して海難防止を呼び掛けている。
平成十一年は、七月十六日から三十一日まで「船舶の点検・整備と航海用機器類の適正な使用」を重点項目として全国海難防止強調運動を実施し、約七、一〇〇隻に対する訪船指導や現場指導、一六二回の海難防止講習会等により海上交通関係法令等の周知徹底を図るとともに、安全運航の励行、危険物荷役時の安全確認等を指導し、必要に応じて是正を勧告した。
また、各管区海上保安本部では地域の特性を踏まえ、台風による海難を防止するための海難防止強調運動、自動操舵海難防止運動等の地方海難防止強調運動を展開した。
航行安全のための新しいシステムの整備
船舶がより一層安全かつ効率的に航行できるよう、航海用電子海図、航行援助システム等新しいシステムの整備に取り組んでいる。
(1) 世界に先駆けて電子水路通報を発行
航海の安全確保のため、海洋調査を実施し、その成果をとりまとめて航海用電子海図等の水路図誌を刊行するとともに、船舶交通安全情報等として提供している。
平成十年九月には、世界に先駆けて電子水路通報を発行した。電子水路通報は航海用電子海図の内容を電子海図表示システム上で更新するための情報をCD-ROMに収録したもので、これにより、従来手作業で更新していた表示内容を自動的に更新することが可能となった。
(2) ディファレンシャルGPSシステムの全国運用開始
船舶が安全かつ効率的に航行するためには、常に自船の位置を確認し、危険な障害物を避け、安全な針路を把握する必要がある。
通航船舶が昼夜を問わず、誤差一〇メートル以内の精度で位置測定が可能となるディファレンシャルGPSシステムの整備を七年度から進めており、平成十一年四月からは、一部の遠方離島海域を除く我が国の沿岸全域で利用が可能となった。今後、電子海図表示システム等と組み合わせて使用する際の位置情報としても幅広い活用が期待されている。